またもや、ロシアと中国との間に不穏な動きが見え隠れしはじめた。
4月24日に開かれた国連安全保障理事会において、日米両国が共同提出した「宇宙空間での軍拡競争を阻止する」とする決議案に対し、ロシアが拒否権を行使、中国も棄権したことで、結果的に理事国15カ国中2カ国の賛成が得られず、決議案が否決された。
1967年に締結された宇宙条約は、地球の周回軌道上に核兵器など大量破壊兵器を配備することを禁じている。今回提出された決議案は同条約の順守義務を確認し、各国に協力を求めるというものだった。
「ところが、ロシアは『(日米による)身勝手な策略だ』という理由で拒否権を行使したのです。宇宙条約は安保理常任理事国である米英仏中露を含む100カ国以上が批准しています。プーチン大統領自身も、宇宙空間での核兵器配備には反対を表明している。にもかかわらず、今回の決議案に賛成しないのは、裏に何かあると勘繰られても仕方ないでしょう。実際、米メディアは『ロシアが人工衛星の破壊を目的とした核兵器を開発中』と報道してもいますからね。そして、そんなロシアとの関係を再構築しようとしているのが、今回、常任理事国で唯一棄権に回った中国です」(国際部記者)
中国とロシアとの間には深く長い結びつきがあるのは言をまたない。ただ、近年の北朝鮮によるロシアへの急接近で、両国の関係がギクシャクしているとも言われていた。
「中国としては、アメリカに対抗するため、なんとしても宇宙空間を支配したいという思いがあり、そのためにはロシアの協力が必要不可欠なのです。一方、ロシアにしても、ウクライナ戦争を通じ、軍事、経済を含め中国の協力なしでは成り立たないことを痛感した。そんなお互いの利害関係を背景に、改めて関係強化を確認するため行われるのが、5月のプーチン氏による訪中だとみられています」(前出・記者)
両首脳の会談が実現すれば、2023年10月に北京で開催された直接会談以来だ。2人が「宇宙の覇権」について実際に意見を交わすのか、世界中が関心を高めている。
(灯倫太郎)