国連安保理“北朝鮮監視”延長否決で中国が「棄権」に回った「金正恩との溝」

「現行犯で捕まらないよう、監視カメラを壊すようなものだ!」

 3月28日、国連安全保障理事会による北朝鮮への制裁の実施状況を調査する専門家パネル(定員8人)の任期を延長する決議案が、ロシアの拒否権行使により事実上廃止。それを受け韓国の黄浚局(ファン・ジュングク)国連大使は冒頭のように吐き捨てた。

 北朝鮮専門家パネルは2009年に設置された安保理の下部組織で、同国に関する情報を収集して制裁違反が疑われる事例を調査する「北朝鮮制裁委員会」のいわば実働部隊だ。

「専門家パネルによって制裁違反の具体的事例が調査され、それが年2回、報告書としてまとめられます。国連安保理はその内容を検討し、違反と認められた場合、その個人や団体に対し制裁を科す。確かに監視カメラのような存在だったと言えるでしょう」(国際部記者)

 ところが今回の決議では、日米韓など13カ国の賛成に対し、北朝鮮との軍事協力を深めるロシアが拒否権を行使。中国も棄権したことで、任期を来年4月まで1年間延長する決議案を否決。事実上、パネルが廃止されることになり、北朝鮮に対する制裁逃れに歯止めが効かなくなったのだ。

「昨年9月の金正恩総書記による訪露以降、両国の連携強化が急速に進み、北朝鮮がウクライナ侵攻で不足する弾薬や短距離弾道ミサイルをロシア本国へどんどん提供し始めた。核開発を進める北朝鮮との武器取引は、言うまでもなく安保理の制裁決議違反。つまりロシアは、安保理常任理事国として同意して作ったルールを、自ら破っていたというわけです。ただ、それでも国連加盟各国の手前、表立ってはできず、コソコソやっている状態だった。しかし今回の拒否権発動で、うるさい監視の目がなくなったわけですからね。今後は堂々と北朝鮮と取引ができるため、武器弾薬や麻薬取引など何でもアリになる可能性は十分考えられます」(同)

 そんな中、気になるのが中国の動きだ。中国がロシアと並ぶ北朝鮮の“後ろ盾”であることは周知の事実。それが、今回の決議では拒否権発動ではなく「棄権」に回っているのだ。前出の記者が説明する。

「2019年にミサイル開発を再開させた北朝鮮は、以降5年で100発近く弾道ミサイルを発射しています。そのたびに国連では安保理が開かれ、北朝鮮への懲罰が議題に上がっていましたが、そのたびにロシアと歩調を合わせるように制裁に反対してきたのが中国。そのため今回もロシア同様、拒否権発動と思いきや違った。この選択は大変大きな意味を持つもので、北朝鮮は事前に知らされていなければ完全な“裏切り”と取る可能性がある。『棄権』というと聞こえはいいですが、結局は『うちは関係ないから』と言っているようなもの。真意はわかりませんが、そんな意思表示に両国間の大きな溝を感じざるを得ません」

 北朝鮮との蜜月ぶりをアピールするロシア。一方、距離を置き始めた中国。ともあれ、パネルという監視の目がなくなった北朝鮮の暴走が加速することは間違いない。

(灯倫太郎)

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