「年収103万円の壁撤廃」など、「手取りを増やす」というキャッチフレーズで支持を拡大してきた国民民主党に、突風のような逆風が吹き始めている。政治部記者は語る。
「勢いのある政党だけに、失言が大きく報道される。今回の“コメ問題”はかなり痛かった」
問題となったのは、5月28日に国会で行われた政府による備蓄米の放出を巡る質疑で、玉木雄一郎代表が「1年たったら家畜のエサに出すようなもの」「エサ米に回るようなものが安く出てきても本当のニーズではない」と発言したことだ。
これに対して、翌29日には小泉進次郎農相が記者団に「備蓄米の放出に取り組んでいるときに私としてはちょっと残念だ」と苦言を呈した。
また、立憲民主党の泉健太前代表も自身のXで「備蓄米は、これから我々国民が口にする重要な主食だ」とした上で、「『1年たったら動物の餌』という表現は、この局面で使うべきではない。改めていただきたい」と指摘。ほかSNS上でも「味を追求しすぎ」「人格を疑う」など批判が殺到。玉木氏は釈明に追われているが、世論の反発は収まる気配がない。
昨年の衆院選で、国民民主党は公示前の7議席から4倍の28議席に躍進。11月には政党支持率が10%に達し、12月以降は野党第1党の立憲民主党を上回ることもあった。
だが、政治アナリストはこう分析する。
「朝日新聞が5月に行った調査では、国民民主の支持率は前月比で4ポイント下がって8%に急落。参院選の比例投票先でも、立憲民主と並ぶ13%にとどまりました。急落の直接的な理由は不明ですが、夏の参院選に向け不倫問題で話題となった元衆院議員・山尾志桜里氏や、須藤元気元参院議員、元維新の足立康史氏といった個性的すぎる候補を公認したことで、支持層の離反が起きた可能性があります」
微妙な民意の変化を敏感に察知した玉木氏は、5月27日に小池百合子都知事と国会内で緊急会談を行った。表向きは「特別な話はなかった」とされるが、政治部記者は「節目ごとに連携を見せ、マスコミに“蜜月”をアピールした」と見る。
だが、そんな巻き返しの動きの一方で、今回の「コメ発言」が波紋を広げた。また、直後には榛葉賀津也幹事長が福岡での街頭演説中に「博多の女性はきれいだね、男性はまあまあだね」と発言し、「軽率だ」との批判も招いている。
国民民主党が再び勢いを取り戻せるかどうかは、6月22日投開票の東京都議会議員選挙にかかっている。現在、都議会での国民民主の議席はゼロ。ここで「二桁当選」を狙う構えだが、政党の将来を左右する大一番となりそうだ。
(田村建光)