トランプ・プーチン「停戦」会談の裏で中国が暗躍する「対イラン核問題」

 3月18日に行われたプーチン大統領とトランプ大統領による電話会談。ロシア大統領府によれば、この会談でプーチン氏は、ロシア、ウクライナ双方がエネルギー施設を標的とする攻撃を30日間停止というトランプ氏の提案に同意。さらに、黒海での船舶の安全確保に関する協議を早急に開始することでも合意したという。

 とはいえ、パレスチナ自治区ガザ地区の例を見てもわかるように、一時停戦が必ずしも恒久的な平和につながるとは限らない。しかも、今回の合意はエネルギー関連施設への攻撃休止であるため、地上戦継続は可能であることから、これがどれほど効果を生み出すかについては疑問の声が多い。

「ただ、3月11日にサウジアラビアで行われた高官級協議で合意には至らなかったことを考えると、一歩前進したことは事実。あとは、いつ、どんな条件で両者に全面的停戦を合意させることができるのかは、トランプ氏のディールにかかっているといったところでしょうね」(外信部記者)

 このところ、ウクライナ停戦問題を最優先させてきたトランプ氏だが、実はもう一つ、秘密裏に画策していた大きな問題がある。それが、核問題をめぐって緊張が高まるイランを、なんとかディールの場に引きずり込もうというものだった。なんとイランの最高指導者ハメネイ師に、核交渉に応じるよう求める書簡を送っていたというのだ。

「これはトランプ氏自身がメディアのインタビューで語ったものですが、ハメネイはこの呼びかけを即座に拒絶したそうです。ただ、イランはトランプ氏の要求をはねつける一方、3月14日に北京で行われたロシア、中国との3カ国外務次官級協議に参加。その場で、イランの核開発をめぐる問題が話し合われたと言われます。これはすなわち、アメリカにはなびかないが、中国とロシアの声にはある程度耳を傾ける、という意思表示。そして、イランの反米感情を巧みに利用し、ロシアを含め連携を深めようと画策しているのが中国だというわけなんです」(同)

 IAEA(国際原子力機関)によれば、イランの核問題をめぐる状況は緊迫の度を増すばかりで、近年では60%以上の濃縮度に高めたウランの貯蔵量を1.5倍に増量。同機関の推測ではウランの濃縮度が90%に達するのは時間の問題で、そうなれば核兵器に転用可能になる。

「米メディアの報道によれば、そんなイランの核関連施設へ、イスラエルが大規模攻撃を計画しているとの情報もあり、23年にイランとサウジアラビアとの外交正常化を仲介し、さらにイラン産原油を15%も輸入している中国としても、このままイランの核問題を放置しておくわけにもいかなくなった。むろん、責任は果たしている、という国際社会へのアピールもある。加えて、トランプ政権が同盟国をはじめ欧州に対し、アメリカの軍事力の依存から脱却し、自国防衛に関して積極的役割を担うよう求めていることもあり、今、中国はなんとしても『リーダーシップがあり責任ある大国』というイメージを世界に与えたい。結果、それがイランの核問題についての積極的関与だと考えられます」(同)

 ウクライナ問題に加え、ガザ問題、そしてイランの核問題…。山積する諸問題をこの先、トランプ政権はどう捌いていくのか。そして、暗躍する中国は水面下でどんな動きを見せるのか。両大国の動向が気になるばかりだ。

(灯倫太郎)

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