プーチン大統領「軍事行動再開」から「ウクライナと会談OK」豹変の真意

 いったい、ロシアのプーチン大統領が突然ぶち上げた、あの一時停戦は何だったのか。

 4月19日、突如、「イースター停戦」を宣言したプーチン氏。ウクライナのゼレンスキー大統領も半信半疑のままこれを受け入れたものの、なんのことはない、宣言後も交戦は継続。ウクライナ側の主張によれば、ロシア軍による停戦違反事例は3000件以上。対するロシア側も、ウクライナ軍の停戦違反事例が5000件以上あったと主張するなど、相も変らぬしりあいが続いている。外報部記者の話。

「『就任後24時間以内に解決する』と豪語していたトランプ氏は、なかなか進まない停戦交渉を巡りイラ立ちを強めており、ついに『停戦に進展が見られなければ仲介を断念するかもしれない』といった発言も飛び出した。プーチン氏が突如『復活祭停戦する』と発表したのがその数時間後とあって、西側ではこの停戦が間違いなくトランプ氏へのご機嫌取りと見られている。ウクライナ側が主張するロシアの停戦違反事例3000件が事実なら、軍部に停戦命令を出していなかった可能性さえ考えられます」

 21日、国営テレビに出演したプーチン氏は、約30時間続いた部分的停戦が終了、「軍事行動を再開した」と発表した。ただ、その後記者団に対し対しては、ゼレンスキー氏が提案している「民間施設に対するドローン・ミサイル空爆を30日間中断する」との案に言及。「我々は常にいかなる平和イニシアチブに対しても肯定的な態度を持っている。ウクライナ政権の代表も同じ考えになることを望む。全てを分析し、それにともなう決定を下すだろう」と、提案を考慮し、「ウクライナとの両者会談に開かれている」としたことで、この突然の態度豹変にさまざまな憶測が広がっている。

「一部米メディアは、17日にトランプ政権高位当局者が、フランス・パリでウクライナ当局者と会談を行い、ウクライナ側に終戦交渉妥結に向けた細部条件を盛り込んだ機密文書を伝えた、と報じています。この文書には現在ロシアが占領するザポロジエ原子力発電所周辺地域を中立地帯と定め、米国が管理するという内容のほか、2014年にロシアにより強制併合されたクリミア半島の領有権を、正式にロシアに引き渡すという内容も盛り込まれているといいます。ゼレンスキー氏は23日に、再びロンドンで米仏代表団と停戦協定案に向け協議する予定ですが、この機密文書通りに事が運べば、プーチン氏としては願ったり叶ったり。それがプーチン氏の狙いだと考えて間違いないでしょう」(同)

 つまり、トランプ氏の顔色を窺い、ご機嫌を取ってなんとかこの機密文書通りに交渉を進めたい。そこで、30日停戦を前向きに考えると言ってみたり、ゼレンスキー氏との会談の可能性を匂わす発言をしているというわけだ。

「ただ、提案文書にはウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟しないことも盛り込まれているといいますからね。領土の分割でさえ、これまで頑なに否定してきたゼレンスキー氏のこと、協議は相当難航することが予想されるでしょう」(同)

 トランプ氏は20日、自身のソーシャルメディアで、「ロシアとウクライナが今週に合意を結ぶことを願う。そうなれば、米国と大きなビジネスを始め、巨万の富を築ける!」と投稿しているが、停戦が実現しない場合は、仲介から手を引く可能性も示唆している。

 いよいよ3年にわたる停戦が大詰めを迎える日が来るのか…世界が注目している。

(灯倫太郎)

ライフ