ワグネルだけじゃなかった!ロシアで軍事会社が乱立する裏事情

 G7広島サミットが3日間の日程を終え閉幕。サプライズで出席したウクライナのゼレンスキー大統領が21日午後9時過ぎ、広島空港から専用機で帰国の途についた。

 サミットでは核兵器のない世界への「広島ビジョン」が発表されたが、むろん、ゼレンスキー氏来日の目的は、G7及びG20首脳らへの人道支援や軍事支援の要請。直接会談により、同氏の思惑通り、継続的な支援を取り付けるという大きな成果を挙げての帰国となったようだ。

 さて、相変わらず激戦が続くバフムトでは両軍一歩も譲らぬ攻防戦が続いているが、実は、この前線には主力を担う「ワグネル」のほか、複数の民間軍事会社が投入され、戦闘を繰り広げていることが明らかになった。

「これは、4月にウクライナの英字紙『キーウ・ポスト』が、国際的なオシント(公開情報収集)企業『モルファー』の調査を報じたものですが、ロシアには37社の民間軍事会社があり、うち25社がウクライナに参戦しているというんです。しかも、37社の約7割は公金で運営されていて、残る3割が官民及び実業家が運営資金を拠出している会社だとか。とはいえ、本来、ロシアにおいて傭兵制度は非合法。しかし、政府としても正規軍で死傷者が出れば責任を担う必要があるものの、民間軍事会社らなら戦死者を出してもカウントする必要がなく、財政負担も軽減できる。そんな理由からプーチンが特例措置を取っていることで、その数が急増し始めたとされています。ただ、バフムト攻略ではワグネルと他の民間軍事会社が手柄を取り合い、連日のように小競り合いが勃発。競争が激化しているとも伝えられますからね。戦場にいる兵士たちは、どこから弾が飛んでくるかわからない状態が続いているのではないでしょうか」(ロシアウォッチャー)

 前出の調査会社モルファーによれば、民間軍事会社の有名どころとしては、クリミア半島で首長を務めるアクショノフ氏率いる「コンボイ」のほか、ロシア最大の国営天然ガス企業「ガスプロム」が設立した「ポトーク」「ファンケル」「プラーミャ」。さらに、プーチンと深い関係にある近いオリガルヒ(新興財閥)のデリパスカ氏らが出資する「レドゥット」などが挙げられるようだが…。

「驚くのは、ワグネルの創設者であるプリゴジン氏が、同社以外にも複数の会社に関わっているということ。つまり、同氏はワグネルだけでなく、ほかにも軍事会社を運営することで、そこからも公金を引き出しているということです。ビジネスマンですから、美味しい汁は何度でも、ということなのでしょうが、傭兵は手柄を立ててナンボの世界。同じ系列会社とはいえ、戦場では、まさに仁義なき戦いが日々繰り広げられているというわけです」(同)

 そして、なんと制服組トップのショイグ国防相までもが「パトリオット」という民間軍事会社を設立。その軍隊が戦場でワグネルと競い合ってるというから、仰天するばかりだ。勝つためには、もはや一切の手段も選ばぬプーチンと、そんなプーチン政権が持つ莫大な公金に群がる、金の亡者たち…。「民間軍事会社」乱立には、そんなおどろおどろしい裏事情があったのだ。

(灯倫太郎)

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