ワグネルに代わり、遂にロシア政府が囚人戦闘員募集!受刑者1万人と「契約」していた

 ウクライナ軍による反転攻勢により、東部ドネツク州の激戦地・バフムトでの劣勢が伝えられるロシア軍。

 民間軍事会社・ワグネルを率いるプリゴジン氏はSNSで、《(部隊の)側面は失敗し、前面は崩壊。正規軍がバフムト近郊の拠点から逃亡している》とコメントしたが、これに対し米CNNテレビのインタビューに答えたウクライナ軍の現場指揮官が、「ロシア軍は抵抗した。逃げたのはワグネルのほうだ」と述べたことで、またしても正規軍とワグネルの「内輪モメ」の状況が明らかになった。

 そんな中、ロシア国内における「兵士募集」について、英国防省がある分析結果を発表し、波紋が広がっている。

「現在、ロシアでは『入隊すれば月給35万円』というポスターやCMなどで盛んに兵士を募っていますが、なかなか思うように人が集まっていない。周知のように、今年2月までは、ワグネルのプリゴジン氏が、『戦場から戻れば恩赦で自由の身になれる』を謳い文句に囚人を戦地に送り込んできました。しかし、帰還後に野に放たれた元囚人らによる凶悪事件が頻発。世論からのバッシングもあり、2月以降、刑務所での戦闘員募集を打ち切ったとされていました。しかし、英国防省の分析で、ワグネルの囚人募集中止はプリゴジン氏の意思ではなく、ロシア国防省の命令だったことが明らかになった。さらに、その裏でロシア国防省は、4月だけで最大1万人の受刑者とウクライナでの戦闘に加わる契約を交わしていた、とも明かされ、ロシア国内に衝撃が走ったのです」(ロシアウォッチャー)

 英国防省の分析が事実なら、民間軍事会社であるワグネルに代わり、いよいよ軍部、つまり政府主導で、囚人を戦場に送る図式が出来上がったことになるわけだ。

「プーチン大統領は昨秋、『部分的動員』を名目にして30万人の予備兵招集に踏み切りましたが、結果、動員逃れで大量のロシア人男性が国外逃亡を図りました。そこで、プーチン氏がプリゴジン氏に指示し、人員確保のための『囚人スカウト』が始まった。しかし、元々正規軍と民間軍事会社とは水と油。そこに囚人が加わったわけですから混乱するのは当然と言えます」(前出・ウォッチャー)

 軍上層部からの猛反発もあり、ワグネルによる囚人スカウトは止めさせたものの、劣勢が続く戦場では死傷者も急増。かといって新しい人員も確保できないため、結局、ワグネルがやっていた囚人スカウトを政府がやらざるを得なくなったということらしい。

「ただ、これはあくまでも国民が大反発している『強制的動員』導入までの時間稼ぎに過ぎないとも言われています。プーチン氏は5月10日に、予備役の民間人を招集して軍事訓練を行うことを認める大統領令に署名しており、強制徴兵の下地ができるまで政府主導の囚人戦闘員でまかなう、ということでしょう」(前出・ウォッチャー)

 ロシアは、いよいよ深刻な兵士不足に追い込まれているようだ。

(灯倫太郎)

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