ワグネル「新トップ」はアフガン戦争従軍、シリアで殺戮を繰り返した「英雄」だった

 ロシア国内で6月下旬に反乱を起こしたワグネル創始者・プリゴジン氏の安否を巡り憶測を呼ぶ中、7月19日、ワグネル系列のテレグラムにプリゴジン氏とみられる人物の演説を収めた動画が投稿され、波紋が広がっている。

 動画は約6分間で、夜間に野外で撮影されているためプリゴジン氏本人であるかどうかは確認できないが、この人物は戦闘員を前に、ロシア軍によるウクライナ侵略の現状を「恥ずべきものだ」と真っ向から批判。そして、「我々はしばらくベラルーシに滞在する。ベラルーシを世界で2番目に強い軍隊にする」と宣言。加えて「新たな道、アフリカに向かう」と、近い将来ベラルーシを離れ、活動拠点をアフリカに移す考えがあることを示唆した。

「この動画はプリゴジン氏の広報サービスによって再投稿されていますが、暗くてプリゴジン氏の横顔らしきものがぼんやりと見える程度。前回アップしたキャンプでの写真しかり、今回の薄暗い中での動画にしろ、何かを隠すための意図が垣間見えます。本人が公の場に現れていない以上、無事であるという確認は何らとれていません」(ロシアウォッチャー)

 一方、独立系メディアによれば、プリゴジン氏の動向をしり目に、ワグネル内部では新指揮官のもと、指示命令系統が確立しつつあるようだ。そして新たなトップと目されるアンドレイ・トロシェフ氏の素性も次第に明らかになってきた。

「2021年に欧州連合(EU)とフランスが公開した制裁関係の文書によると、トロシェフ氏は1953年4月、旧ソ連のレニングラード生まれ。ロシア軍を退役した元大佐で、ロシア内務省の元特殊緊急部隊要員としてチェチェン戦争やアフガン戦争にも従軍。アフガニスタンでの軍務が評価され、『赤星勲章』という高位の勲章を2つも授与されたほか、チェチェンでの作戦に対しても複数の勲章が授与されたと記録されています」(同)

 その後、ワグネル創設の際にメンバーとして参加。現在は執行役員についているとされるが、シリアでは政権側の軍事作戦に参加し、特にデリゾール地域では参謀長として働いたという。つまり、シリアのアサド政権を支える民兵組織のリーダーとして反政府勢力を掃討し、民間人をも弾圧してきたワグネルの創設メンバーの一人なのである。

「ウクライナとの戦いでも、現場の実質的トップはトロシェフ氏だったともいわれており、つまり、オーナーはプリゴジン氏ですが、戦場で直接指揮を執ったのはこの人物だった可能性が高い」(同)

 だとすれば、プリゴジン氏を排除しても、このトロシェフ氏を押さえておけば、プーチン大統領はワグネルを操ることができるわけだ。

 いずれにしても、姿を見せないプリゴジン氏と、新指揮官と噂されるトロシェフ氏の動向は世界から注視されるのである。

(灯倫太郎)

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