ロシア非常事態省は23日、民間軍事会社ワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏が搭乗していた自家用ジェット機が、モスクワ北西のトベリ州内で墜落したと発表。搭乗者10人全員が死亡し、ワグネル関係者が管理しているテレグラムチャンネル「プリゴジン2023」は、プリゴジン氏の遺体が確認されたと投稿した。
自家用機はモスクワからサンクトペテルブルクに向かっており、ワグネルに近いテレグラムチャンネル「グレーゾーン」によると、地対空ミサイルが発射された痕跡があり「撃墜された」と報じている。ついに「粛清」されてしまったのか。
6月のワグネルの乱失敗後、いったんはベラルーシ入りしたものの、プリゴジン氏のその後は動向は不明だった。21日に反乱後初めて「グレーゾーン」に動画が投稿され、具体的な場所こそ明らかにしなかったものの、「アフリカのある国に滞在中」と主張していた。
「映像を見る限り、迷彩服で自動小銃を持って立つ同氏の後方には戦闘員が乗る小型トラックが見える以外、場所が判断できるものはありません。ただ、撮影場所は砂漠であるとみられ、本人も以前からベラルーシとアフリカを行き来しているとほのめかしていたこともあり、アフリカである可能性は高いとみられていました」(国際ジャーナリスト)
動画の中でプリゴジン氏は、「ここは気温が50度だが、全てがわれわれの思い通りだ。ワグネルはアフリカを自由にし、アフリカの人々の正義と幸福のために働いている」として、「われわれはアフリカの人々のためにIS(イスラム国)やアルカイダ、他の無法者に悪夢をもたらしている」と、過激派組織やテロ組織と対峙していると述べ、さらには「すべての大陸においてロシアをより偉大にしていく」と、あくまでもロシアとして親交のあるアフリカ諸国を軍事支援している、との立場を強調していたのだが‥‥。
「西アフリカや中央アフリカ共和国をはじめ、アフリカ諸国とズブズブの関係にあるワグネルを、当初はプーチンは切れないとみられていました。今後もアフリカ諸国に対し、軍事支援を強化するとしており、ワグネルはその橋頭保となっていましたからね」(同)
前日23日には、プリゴジン氏と関係が深いとされるセルゲイ・スロビキン上級大将が航空宇宙軍総司令官を解任されたと、国営ロシア通信が伝えていた。こちらも6月の反乱以降、消息不明のままの処分であることから「粛清」されたとの見方もある。
「裏切り者は許さない」主義のプーチンがついに牙をむいたのだろうか。反乱を仲裁したベラルーシ・ルカシェンコ大統領との関係も微妙になってきた。
(灯倫太郎)