【今回のお値段「アジフライ」:(スーパー)150~200円(居酒屋)350~400円(仕入れ値60~100円くらい)】
「アジ」といえば、大衆魚のイメージが強いが、ブランドものになれば十分に高級魚の部類に入る。例えば大分・佐賀関で水揚げされる関アジなどは、市場価格でもキロ5000円以上は覚悟しなくてはならない。業界関係者によれば、
「関アジの場合、豊後水道の荒波のおかげで身が引き締まっているのと、伝統的に一本釣りで獲るので、巻き網とかで一度に大量に獲るのに比べて魚にストレスがかからずに、質のよさを保てるのが特徴ですね。さばく時も、1匹ずつ丁寧に扱っていくし」
他にも富山湾に面した氷見のアジ、千葉・金谷の黄金アジなどは絶品として知られていて、市場価格で最低でもキロ3000円くらいはする。ブランドものでない標準的なアジなら、だいたいキロ1000~1500円といったあたりか。
アジは暖流に乗って日本沿岸を回遊している魚なので、基本的に日本のどこでも獲れるし、一応、旬は初夏から秋口とされているものの、地域によって変わってくる。
さらに釣りのターゲットとしてもポピュラーで、湾内や防波堤、それに沿岸での船釣りでもアジはよく釣れる。東京湾にアジ漁に出て、釣ったアジを調理して店に出す小料理屋もあるくらい。いいポイントさえ見つければ、1日に50~100匹釣れるのも珍しくないとか。
とはいえ、スーパーで売られ、一般家庭の食卓に乗るアジの多くはいわゆる巻き網漁などで大量に獲ったアジだ。最も一般的な料理のアジフライでも、
「実は、安いアジフライは、2回冷凍されているものが主なんですね。まず九州の沿岸でまとめて網で獲れたアジを冷凍します。それを今度は外国に持って行き、さばいて揚げてと加工をする。出来上がったアジフライをまた冷凍コンテナに積んで日本に輸入するんです。1枚50グラム前後のもので仕入れ価格60~100円くらいが店頭には150~200円くらいで並んだりします」(前出・業界関係者)
より手をかけてアジをさばこうとすれば、ウロコや内臓を取るだけで手間がかかる。そこをなるべく機械的に、しかも低コストでやろうとすると、輸送費をかけても外国で加工するほうが合理的なのだとか。もっとも中国あたりはもう人件費が上がってしまって、今は加工工場の多くが東南アジアに移行しているとも。
安さが売りの居酒屋あたりでは、これが1枚350~400円くらいで出されたりする。さすがに「一本釣り」で獲ったようなアジを使おうものなら、ある小料理店主によれば「800~1000円以下で出すのは難しい」とか。
山中伊知郎(やまなか・いちろう)30年前、ある雑誌の連載の取材で、「ギャグマンガのレジェンド」赤塚不二夫先生のお宅に何度もうかがったことがある。先生、アジフライ好きだったな。