【ルポ】死ぬまで楽しむ「生活保護」のリアル実態(1)「毎年1月はカツカツ」

 この物価高では、最大月額6万8000円の国民年金で「健康で文化的な最低限度の生活」を営むことは不可能。だが、心配しても始まらない。日本には最後のセーフティーネットがあるではないか。老後資金2000万円なんてクソくらえ! 2大ドヤ街で楽しく生きる生活保護受給者たちの肉声を聞いた。

 1月下旬に訪れたのは東京都台東区にある「山谷」。「ドヤ」と呼ばれる簡易宿泊所が密集しており、かつては日雇い労働者の生活拠点として日本の高度経済成長を支えたが、時代の変遷により、今では住民の大半を生活保護受給者が占める「福祉の街」に変貌していた。ドヤ街に詳しいルポライターの國友公司氏が解説する。

「90年代中盤から後半にかけては『路上生活者の街』と呼ばれていました。バブル経済崩壊による不況で仕事を失ってしまい、ドヤに住めなくなった人たちがそのまま路上生活者として居ついてしまったのです。路上生活者を減らすために、行政がドヤへと誘導していきました。高齢者や身元不明者だとアパートの審査をクリアできませんが、ドヤなら審査はおろか敷金・礼金などの初期費用なしで即日入居できますからね。現在はドヤに住む9割が生活保護を受けているといいます」

 清川エリアにある「アサヒ会通り」をぶらついていると、コンビニの前で缶酎ハイを飲むカズオさん(仮名)=60代男性= に「おい! 見ない顔だな」と声をかけられた。そのままコンビニでお茶ハイのロング缶を2本購入して、乾杯がてら話を聞けば、3畳間のドヤ暮らしが今年で10年目に入ったという。もともとは建設工事や土木工事の現場仕事をしていたが、メンタルを病んで職を失い、生活保護を受給している。

「“ヤマ”の人間はみんな貧乏暮らしだよ。特に毎年1月はカツカツ。いつも月の頭に保護費が入るんだけど、1月分だけは年末年始の連休の影響で12月下旬に前倒しで入るんだ。やっぱ、大晦日や三が日くらいは豪勢にいきたいじゃない? 三ノ輪のガールズバーで散財したらすぐにスッカラカンになっちゃうの」

 それでも、毎月支給される生活保護費は14万5000円ほど。東京23区で支給される単身世帯の相場よりも約1万5000円高い金額に設定されているのは、家賃に相当する「住宅扶助費」の特別基準が適用されているからで、

「ほとんどのドヤが1泊あたり2250円。23区で設定されている住宅扶助費の上限額は5万3700円ですが、山谷は特別基準が適用されるので6万9800円。その上限額に合わせてドヤの家賃が設定されているんです」(國友氏)

 残りの「生活扶助費」は7万6310円。30日計算で1日あたり約2500円使える算段になるが‥‥。

「最優先は酒とタバコ。支給されてからの2週間はほとんど我慢しようとは思わない。それでも、酒は安いカップ酒や缶酎ハイ、タバコも500円以下で買えて本数の多い『CAMEL』ばかり吸っている。残りの2週間は財布を締めるために節約生活。タバコもシケモクを拾って吸っている。最近は路上喫煙の禁止や電子タバコの普及でシケモクを探すのも苦労しているよ」(カズオさん)

 カネがなくとも嗜好品は手放せない。されど、食べないことには生きていけない。

「保護費が入った日に『業務スーパー』で袋麺を120食分買っておくの。5食入りで200円しないのを24パック買っても5000円しない。仮に1日に4食だとしても1カ月は持つから最悪食いっぱぐれる心配はいらないんだ。余れば誰かに譲って恩を売ることもできるしね。ちなみにドヤは水道光熱費が込み込みなんだけど、電子レンジのような消費電力の高い電化製品を持ち込むとオーナーにイヤな顔をされちまう。もっぱら、調理はすべて小型のホットプレートで賄っているよ」(カズオさん)

 餓死を避けるためには自炊が必須。さらに万全を期すためには「炊き出し」のフル活用がキーポイントとなる。

(つづく)

ライフ