「備蓄米放出」でも値下がり要素ナシ、石破政治で身にしみる「苦しい日本」

「コメが高くて買えない」という国民の悲鳴を受けて、1月に入り江藤拓農水相が急遽、政府備蓄米の放出の方向を打ち出した。農水担当記者が明かす。

「政府備蓄米はおよそ100万トンを目安に用意されていて、コメ凶作や大災害など緊急時に放出される仕組み。24年6月末時点で91万トンの備蓄米がある。それが凶作でもないのに農水相が放出を示唆したということは異常事態です」

 昨年、コメそのものの品不足とコメ価格の高騰が夏から秋口にかけて起きた。しかし当時の岸田内閣の坂本哲志農水相は「新米が出てくれば価格は落ち着く」と楽観論を示していたのだ。だが新米が出回った昨秋以降も、品不足は落ち着いたものの、コメの価格高は一向に収まらず、ひたすら右肩上がりが続いた。コメ業者が明かす。

「昨年9月にはコシヒカリ5キロで3800円前後でしたが今は4000円を突破している。原因は流通コスト、人件費、肥料代、それにガソリンなどの高騰がある。これを踏まえ農家からコメを買い集めるJAなどの集荷業者が『価格は簡単に下がらない』と読み、集荷業者間でコメの奪い合いが起きたからです」

 例えば競争相手が60キロで前年比プラス3000円なら3100円で買う、という具合だ。

 いずれにしてもコメ高騰の影響で小売業界でも昨年末から今年にかけて値上げラッシュが起きている。例えば「カップヌードル」でお馴染みの日清食品は即席カップライスなど多くの商品で今年4月出荷分から11%の値上げを発表している。商品名でいえば「カップヌードル ぶっこみ飯」価格289円が321円(税込、以下同)になるという具合だ。

 セブン-イレブンも「おにぎり」関連商品を続々と値上げする。「塩むすび」は20円値上げで116.64円から138.24円、弁当も人気の「若鶏のジューシー唐揚げ弁当」を50円値上げして626.4円、「五目チャーハン」は27円アップの378円となる。

 デニーズはライスを44円値上げしてライス増量無料をやめるという。では、政府備蓄米が放出されれば今後どうなるのか。

「備蓄米放出でも一時的安売りはあっても、一度上がったものはなかなか下がりにくいのでは。というのもガソリン価格、人件費、肥料代が高いまま固定化し、さらに上がる気配。そんな状況ではコメ価格が以前の値に下がる見通しがないどころか『国産新米』が高級食材になってしまう事態も起きそうです」(スーパー関係者)

 冒頭の記者は「自民党政権は坂本前農水相の予見が外れて慌てて備蓄米放出に乗り出すドタバタぶり。これは完全に失政だ」と批判する。政治アナリストも、こう言う。

「裏金問題も令和の米騒動も前政権、元政権の尻ぬぐいという感もあるが、言葉を変えれば自民党政権の失政のツケ。国民が石破政権に期待したのは、そうした自民党政権の悪政やぬるま湯体質の払拭だったはず。しかし今の石破政権は新政策をぶち上げられない。それは石破首相のスローガン『楽しい日本』『令和の日本列島改造』が国民の心にいまひとつ響かないことでも明らかだ」

 アルピニスト・野口健氏はXで石破首相の施政方針演説について触れ《「楽しい日本」…我が国はそんな悠長な状況でないだろうに》と綴り、トランプ大統領と比較して《トランプ氏のアクションは早い。早くも不法移民の強制送還が始まったと報道》と書き込んだ。

 今の石破政権の悠長な政権運営のままでは「苦しい日本」「令和の日本列島破壊」とも、なりかねない。

(田村建光)

ライフ