【今回のお値段「テレビの歌番組」:特番 制作費1500万~2000万円前後(昔の1時間番組1本200
地上波のテレビの中でも、歌番組は特に、制作費が切り詰められているジャンルの1つだ。あるテレビ局関係者によれば、
「30~40年前の歌番組黄金時代なら、1時間1本で2000万~3000万円以上かかるのは当たり前でしたね。歌手1人呼ぶのでも、メイクに5万、スタイリストに5万、それに本人のギャラも、となると、グループも含めて20~30人も呼んだら、たちまち数百万になってしまう。MC役もトップクラスなら毎回400万~500万円はかかる」
そこにカメラや照明、美術費もプラスされるのだが何より曲ごとに違うセットを組んだり、スタジオの外へ中継スタッフを出したりの費用が1回100万~200万円以上かかった。それでもバブル期はテレビ局も、平気でお金を出せた。
その後は、まさに予算削減の歴史だ。新しいセットは極力作らず、できるだけ以前のものを使い回す。中継もなくす。新曲発売のプロモーションの名目でミュージシャンのギャラは抑えるか、タダ。メイク、スタイリストなどのスタッフもレコード会社負担とか。フルオーケストラなら100万円かかるところは削減。1人4万~5万円のバックバンドやバックダンサーなどのギャラもレコード会社負担かテレビ局と折半。MCのギャラも200万~300万円以内‥‥。
削減を続けていくうちに、予算は減ったものの、それと並行して、ゴールデンタイムでレギュラーの歌番組も減っていった。代わりに増えたのが、2時間以上かけて何十年前のヒット曲VTRを次々と流す特番形式の番組だ。前出・テレビ局関係者も、
「ミュージシャンを直接出すわけではないので、ギャラも安く済むし、セット代もかからない。それで2時間以上もつんだから、制作費は相当減らせます。しかも、テレビを主に見る中高年齢層の視聴者は、最新ヒット曲より“ナツメロ”の方がよほど親しみやすい。制作費を抑えて、視聴率も取れる。一石二鳥なんです」
VTRを使う場合、使用料はJASRAC(日本音楽著作権協会)だけでなく、ミュージシャン本人が当時所属していた事務所にも支払われる。JASRACには局が他の番組を含めて一括して、事務所には番組ごとに払われる。合わせて1曲につき5万~10万円として、たとえ1番組に50曲使ったとしても250万~500万円。それでセットは1つ、MCに200万~300万円かけても、中堅・ベテランで10万~20万円、若手なら3万~5万円のギャラでゲストを集めてのしゃべりで間をつなげば、カメラ、音響、照明などの技術費用を加えても2時間番組でも1500万~2000万円で済んだりする。
今後もVTR使用の「ナツメロ」系特番は、しばらく減ることはなさそうだ。
山中伊知郎(やまなか・いちろう)以前、取材でBSの音楽番組のスタジオに行ったことがある。GS(グループサウンズ)特集でゲストはゴールデンカップス。まさしく見るからに「不良のオジサン」の集団だった。