トランプ×プーチン会談で停戦合意へ?ウクライナの反応と今後の展開

 昨年の大統領選の時から「大統領に就任したら24時間以内に停戦させる」と明言していたトランプ米大統領。しかし、その約束は果たせぬまま、ロシアとウクライナによる戦争が丸3年となった。そんな中、トランプ氏がロシアのプーチン大統領と電話会談し、停戦に向けた協議の開始に合意したと発表したのは2月12日こと。両者の電話による会談は約1時間半に及んだとされ、トランプ氏は「そう遠くない将来にプーチン氏と直接会談する見通しで、場所はサウジアラビアになるだろう」と述べ、急転直下の展開が、「トランプ・ショック」として大きく報じられた。

 とはいえ、この電話会談、ウクライナ側は事前に一切知らされておらず、まさに寝耳に水。不意打ちとも思える頭越しでの停戦交渉の可能性に対し、ゼレンスキー大統領は「我々は、我が国が関与していない合意は受け入れない」懸念を表明。直後にドイツで開かれた国際会議「ミュンヘン安全保障会議」でも大きな波紋を広げることになった。

 全国紙国際部記者が説明する。

「トランプ氏はその後、今後の停戦交渉にはウクライナも参加すると述べ、批判への火消しを図ったものの、依然、ウクライナ側が求める北大西洋条約機構(NATO)加盟には否定的見方を示すなど、ロシア寄りのスタンスを取っているようにも見えます。そのため、今後はロシアとウクライナとの『共通理解』と、トランプ政権とがどう調整を図っていくかが最大課題となるはずです。いずれにしろ、ゼレンスキー政権が求める安全保障内容と、早急な停戦実現を目指すトランプ政権との『時間的要素』が上手く兼ね合いを見せるかどうか、そこが鍵になってくるでしょうね」

 トランプ氏と言えばディール外交で知られるが、トップどうしとなると、成功すればいいが失敗した場合、次がなくなる。下から上がってきた案件であれば、トップの判断でもう一度下に戻し再構築させることも可能だが、トップ同氏が決裂した場合は仲立ちできるものがおらず、結果、その後の回復が不可能になるケースも多い。

「トランプ氏の場合、良い例が北朝鮮の金正恩総書記とのトップ会談です。第1次トランプ政権時の2017年、当初両者は『リトルロケットマン』『老いぼれの狂人』などと舌戦を繰り広げていたものの、19年7月、トランプ氏が北朝鮮を電撃訪問。軍事境界線を挟んで正恩氏と握手を交わして歩いて越境し、その快挙に全世界が驚愕しました。しかしその後、北朝鮮の非核化を巡り2人は決別。金総書記はその後もトランプ氏に対し『ラブレター』と称する書簡外交を送り続けましたが、結局両首脳の関係は修復できなかった。つまり、トランプ氏は正恩氏とのディールに失敗したわけです」(同)

 結果、今はトランプ氏側から「彼に会いたい」とラブコールを送るものの、正恩氏側から袖にされている状況が続いている。

「要は、同じことがプーチン氏との間でも、起こりうる可能性があるということ。そうなれば、とばっちりを受けるのはウクライナです。ゼレンスキー氏も、期待はしているものの、そこが最大の懸念材料だと感じていることは間違いないでしょうね」(同)

 たしかに、「ノーベル平和賞が目的では」とも言われるトランプ氏の和平仲介だが、お得意のディールが失敗すれば、最大の被害者はウクライナということになる。

 金総書記もさることながら、プーチン氏はそのさらに上をいく冷徹な独裁者。はたして、トランプ氏は北朝鮮の時と同じ轍を踏まず、この問題をうまく着地させることができるのか。トランプ氏とプーチン氏との直接会談は「2月中」とも言われるが、いったいどんなディールが行われるのか…全世界が固唾をのんで、その行方を見守っている。

(灯倫太郎)

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