トランプ大統領が仲裁に乗り出すか「印パ核戦争」で死者推計1億2500万人の衝撃!

 長年にわたりインドとパキスタン両国が領有権を争ってきたカシミール地方のインド側支配地域で4月22日、イスラム過激派の武装勢力が観光客らに向けて発砲。うちヒンズー教徒の観光客26人が殺害され12人が負傷した事件を受け、インド政府は5月7日未明にパキスタン側のカシミール地方にあるイスラム過激派組織の拠点を攻撃。その報復としてパキスタン軍は翌8日、インド軍兵士40人の殺害を発表するなど、血で血を洗う応酬が激化している。

 両国は1947年の分離独立以来、3次にわたって国境紛争を繰り広げてきた。第1次と第2次は、いずれもカシミール帰属問題をめぐる紛争で、第1次はヒンズー教徒でインド帰属を目指すカシミール藩王国の藩王と、住民の大部分を占めるイスラム教徒とが対立。インド、パキスタン両国が軍を派遣し軍事衝突した。

 1965年に勃発した第2次紛争は、インドが実効支配していたカシミールの完全統合を宣言したことにパキスタンが反発したことがきっかけだ。

 1971年の第3次紛争はパキスタンが東パキスタン(ベンガル地方)の独立運動を弾圧し、多数の難民が発生。最終的にはインドの軍事援助により東パキスタンはパキスタンから分離するも、以降は両国それぞれが実効支配地域への軍配備を増強することになり、以来50年以上にらみ合いが続いている。

「特に80年代は、インドでヒンズー至上主義が台頭して政権を獲得すると、パキスタンでは軍事政権によるイスラム化が進められた。1998年にインドが核実験を断行すると、同年にパキスタンも核実験で対抗するなど、核をちらつかせてのつばぜり合いに発展、緊張関係が続いてきたのです」(国際部記者)

 さらに、インドが実効支配する地域がインダス川の上流に位置し、下流にあるパキスタンはいわばインドに“生命線”を握られる形となっており、この「水問題」も紛争の種になっていた。

「世界銀行の仲介で1960年には両国の間で『インダス川水利条約』が締結されたものの、4月のテロ事件を受け、インドが65年ぶりにパキスタンへの水の流れをストップしてしまったんです。パキスタンとしては水のせき止めは死活問題。これをインドの宣戦布告と受け止めています」(同)

 怖いのは、前述のように両国が核兵器保有国であるということだ。印パ合わせて400個程度の核弾頭を保有しているとされ、インドメディアは「核戦争になれば死者は最大1億2500万人になる」と推計。核兵器廃絶を訴える国際医療団体「核戦争防止国際医師会議」は、印パ核戦争で世界人口の約3分の1が飢餓の危険にさらされる警告している。

 そんな中、米トランプ大統領は6日、「残念だ。彼らは何十年と戦ってきた。(衝突が)早く終わることを望むばかりだ」と述べ、双方に自制を呼び掛けた。一部には「トランプ氏がノーベル平和賞狙いで、印パ紛争仲裁に乗り出すのではないか」との見方もあるが、ウクライナ戦争を「24時間以内に終わらせる」と豪語しながら未だ達成できないのに、70年以上にわたって続く両国の対立を解消することができるのかどうか。

 もちろん、核戦争を食い止められればノーベル平和賞に値するが、まずは紛争がこれ以上エスカレートしないことを祈るばかりだ。

(灯倫太郎)

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