トランプ大統領、停戦交渉仲介役「放り出し」で対中国に続き“2連敗”の大打撃

 大統領就任前から、「自分なら24時間で戦争を終わらせることができる」と豪語し、ロシアとウクライナの和平に向け仲裁役を買って出ていたトランプ米大統領のトーンが著しくダウンしている。

 5月19日、ロシアのプーチン大統領と2時間半にわたって電話会談したトランプ氏。しかし直後、SNSに《停戦のための条件は当事者同士で話し合われます。交渉の詳細は彼ら以外、誰にも分かりません》などと和平交渉の旗振り役撤退を示唆する投稿をしたのだ。国際部記者の話。

「トランプ氏が電話会談の5日前まで、プーチン、ゼレンスキー両氏によるトルコでの会談実現に向け奔走していたことは事実。しかし、結局それも実現せずに終わってしまった。そればかりか、2時間半にわたる電話の中でも、『和平条約に関する覚書を作成する用意がある』と停戦を促すトランプ氏に対し、プーチン氏は応じる様子もなく、相変わらずウクライナ批判を繰り返すだけ。さらにウクライナのNATO加盟断念やウクライナ東部・南部4州のロシア領承認など、毎度おなじみの無理な要求を繰り返したようです」

 電話会談後、プーチン氏は記者団に対し「非常に有意義だった」と語ったものの、トランプ氏が提示した和平条約に関する覚書については、「最も重要なのは危機の根本原因を除去することだ」と従来通りの主張を繰り返し、1ミリの歩み寄りもない会談は不毛なまま終了したと伝えられる。

「ウクライナが戦闘において優位な立場にあれば話は別ですが、現状ロシアの優位が伝えられる中、ロシア側が即時停戦するメリットはない。つまりいま停戦が可能になる方法としては、悲しいかなロシア側に有利な条件をウクライナが受け入れるしかないということ。おそらく今回の会談でトランプ氏も、その現実を改めて突き付けられたということでしょう。それがSNSでの丸投げコメントに繋がったと考えられます」(同)

 さらに、和平交渉に関心を示すとされるバチカンを引き合いに出し、《教皇レオ14世がバチカンで話し合いをしたいのであれば、それ以上良い場所は思いつきません。ここ(アメリカ)もかなり良い場所ですが、私はバチカンの方が好きです》と、あたかもバチカンが交渉の場としては最適、とでも言わんばかりの言い回しに「もはや和平仲介の主導権を譲り渡したも同然」との声もある。

「結局、停戦後ビジネスに展開させたいとの思いが強いトランプ氏と、ただ単にウクライナを征服して奪い取ろうというプーチン氏との感覚に、決して埋められない大きなズレがあるということ。だからこそ、トランプ氏がいかに提案条件を出したところで取引は成立しない。トランプ氏は中国との貿易戦争でも振り上げた拳を下ろし、関税の大幅引き下げを発表してる。これで停戦交渉の仲介から撤退すれば、習近平主席に次いでプーチン氏にも屈したことになり、国内外においてカリスマ性は地に落ちることになるでしょうね」(同)

 ノーベル平和賞がはるか彼方に遠のいた感のあるトランプ氏だが、仲介の行方は…。

(灯倫太郎)

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