所有地に詐欺グループの巣窟が…フィリピン女性市長に「中国スパイ疑惑」

 中国と南シナ海の領有権と海洋権益を争い、緊張が高まるフィリピン。中国側が権利を主張する海域にはフィリピンの排他的経済水域(EEZ)も含まれていることから、フィリピンが実効支配するスプラトリー諸島のアユンギン礁周辺では、双方の船が衝突するなど、一触即発の関係が続いている。

 中国とのにらみ合いが続く中、フィリピンの地方都市の35歳女性市長に「スパイ疑惑」が浮上。連日現地メディアで報じられ、大騒ぎになっている。

「一報を伝えたのは4月20日の英BBC。問題の人物はフィリピン北部にあるバンバンという小都市の女性市長である、アリス・グォ氏です。今年3月、フィリピン当局がバンバンにあるオンラインカジノをガサ入れし、202人の中国人を含む数百人を保護しました。ここは、いわゆる『ロマンス詐欺』の犯行グループの巣窟で、彼らはここに閉じ込められ、犯行の手先に使われていたのですが、実は同施設があった土地の半分を所有していたのが、この市長だったというわけなんです」(外報部記者)

 女性市長が所有する土地は約8万平方メートル。敷地内にはプールやワイン貯蔵庫などもあり、専用ヘリコプターも所有していたという。当局の調査に対し、グォ氏は市長選に出馬する2年前に半分の土地を売ったが、むろん、そこに建った施設で「ロマンス詐欺」が行われていたなど、まったく知らなかったと説明しているというが…。

「とはいえ、施設は市長室のすぐ後ろにあり、数百人が閉じ込められているという状況の中、本当に不審な点に気付かなかったのか。その疑問は残ります。さらに、今回の件で、当局は市長の出身背景などについても調べたようなのですが、出生やプロフィールに関して、いろいろと不思議な点が出てきた。というのも、彼女は上院の公聴会で、出生場所は病院ではなく実家だった、としているんですが、17歳まで出生届を出していないというんです。しかも、学校に通っていた形跡がなく、本人はホームスクーリングを受けていた、と。彼女が有権者登録を行ったのは、市長選挙に出馬して当選する1年前の2021年ですが、それまでどこで何をしていたを語りたがらないことから、中国人スパイ説が噴出したというわけなんです」(同)

 BBCによれば、2022年の選挙遊説演説で彼女は、流暢なタガログ語で「母はフィリピン人で父は中国人」と語っていたとされるが、事業記録を確認したところ、中国国籍者であることが明らかになったという。

「上院議員の間からも『中国人スパイがフィリピンの政治に影響力を行使するため、何らかの意図を持って議会に入り込んできたのではないか』といった疑念の声があがっているようです。ただ、グォ市長はスパイ容疑に対していっさい言及せず、上院に出席後は、メディアのインタビューも避けているようです」(同)

 この問題についてはマルコス大統領も深い関心を示しており、5月16日には会見で「誰も彼女のことを知らない。我々は彼女がどこから来たのか知りたいので、移民局と共同で彼女の市民権に対する問題を調査している」と明言。政府として事実調査を行い、不法行為が立証された場合は、厳正に対処するとしている。

 謎が謎を呼ぶ、35歳女性市長にフィリピン国民の関心が注がれている。

(灯倫太郎)

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