南シナ海での中国による不法な海洋権益への主張や埋め立て地形の軍事化、威嚇的で挑発的な活動に対し反対する―。2月7日、米ホワイトハウスで会談した石破茂首相と米国のトランプ大統領は会談後、「日米関係の新たな黄金時代を追求する」として中国を名指ししながら、改めて中国をけん制した。
声明によれば、両首脳は日米安全保障条約において尖閣諸島への適用を再確認。米軍と自衛隊による南西諸島における二国間プレゼンス向上を図ることで、台湾海峡の平和と安定維持の重要性を示した。
むろん、この声明に猛反発したのが中国だ。中国外務省は10日、劉勁松(りゅう・けいしょう)アジア局長が在中国日本大使館次席の横地晃公使を呼びつけ、厳重抗議。中国メディアの報道によれば、劉局長は横地氏に対し、「中国についての否定的な言動に重大な関心と強烈な不満を覚えた」と伝えたという。
「同日、記者会見を行った中国外務省の郭嘉昆副報道局長も『“一つの中国”の原則に照らして処理されるべきで、台湾には参加する根拠も理由も権利もない』といつになく強い口調で強調し、『中国の核心的利益の中の核心で、いかなる外部の干渉も受け入れられない』と台湾問題を含め、東シナ海、南シナ海を巡る問題で日米の連携強化を、改めてけん制しました」(外信部記者)
一方、台湾としては、むろん今回の声明を大歓迎。頼清徳総統も、さっそくXで《今後も地域の平和と繁栄を促進するため、米国、日本、その他グローバルパートナーと協力するという、我々の決意は今後も揺るぎない》と投稿するなど、今後発言が覆される可能性はあるものの、ひとまずは胸を撫で下ろしたといったところだろうか。
とはいえ、トランプ氏は昨年の選挙期間中、「再選したら台湾を守ることは絶対にない!」、「TSMC(台湾積体電路製造)がアメリカの雇用を奪った、台湾はもっと『保護費』を払うべきだ」などとしていた。一貫して台湾に厳しい発言を繰り返してきたトランプ氏による発言の変化は、いったい何を意味しているのか。
「むろん、台湾と日本とが密接な関係にあることで、金ズルである日本との関係を壊したくないという思惑もあるでしょうが、トランプ氏はかねてから台湾に軍備強化を求めてきました。その背景にあるのがアメリカによる台湾への兵器販売です。ただ、アメリカが台湾に売りつけたい兵器は、台湾の戦略に沿ったものではなかったり、中古だったりと、必ずしも台湾が購入したいものではない場合が往々にしてあるのだとか。つまりトランプ氏は台湾海峡の平和と安定維持の見返りに、台湾からも大金を引き出そうと考えている。もちろん、トランプ氏が台湾を中国との駆け引きの材料として使う可能性もあり、今回の共同声明も鵜呑みにはできないでしょうね」(同)
トランプ氏は4日、中国製品に対し10%の追加関税を課した。その報復措置として中国も、10日午前0時から米国製品80品目に対し、10~15%の関税を課し始め、これで第1次トランプ政権時代に続きいよいよ「米中貿易戦争第2ラウンド」が本格化。カナダや中南米などの米同盟国・友好国が、関税や領有権を巡る脅しを受ける中、今のところ日本は破格の待遇を受けていると思える。そして、日本と友好関係にある台湾もしかり。ただ今後、中国と台湾、そして米国との間で4つ巴による水面下での戦いが繰り広げられることは必至。トランプ氏との初会談で高評価を得てご満悦だった石破首相は、浮かれずに今後も日本のために頑張ってもらいたいものだ。
(灯倫太郎)