悲劇の序章? 全国初!コロナ入院患者受け入れ病院が倒産の波紋

 大阪府の要請を受け、新型コロナの感染患者を受け入れていた大阪市内の病院を経営する医療法人が、大阪地裁に民事再生法の適用を申請、弁済禁止の保全処分と監督命令を受けたことが27日、新聞テレビ各社で一斉に報じられた。

 発表した帝国データバンク大阪支社によれば、この病院は内科や外科外来ほか、24時間態勢で緊急患者受け入れも行う中核病院で、今年1月から新型コロナの軽症と中等症患者を一部の病床で受け入れたという。

 在阪の記者が語る。

「今回、帝国データバンクによって発表された、この医療法人の負債総額は約52億円。コロナ禍以前から医療設備の導入などによる投資負担で債務超過に陥っていたようですが、コロナ感染拡大で、外来患者が減少、経営が悪化し民事再生法適用の申請となったようです。コロナの入院患者を受け入れる病院が倒産したのは全国で初めてですから、センセーショナルに取り上げるメディアも多かったですね」

 報道を受け、SNS上には、《必要な医者と看護師、機器設備投資、感染対策を行うコストはとんでもない額だろう。コロナ患者受け入れても、それに見合う収入なんぞなく、従事者はむしろ経営悪化で賞与減。まじで悲惨だな》《病院だって慈善事業でやってるわけではないんだから医療従事者や病院へ積極的な支援金を出すべき》《「なんで民間病院はコロナ患者を受け入れないんだ!」と安易に口走る人たちは、民間病院の経営がどれだけ大変かを学んでから発言した方がよい》等のコメントが散見。さらに2ちゃんねるの開設者・ひろゆき氏が28日、ツイッターに《コロナ患者を受け入れる病院や医療従事者にはお金を配りまくればいいのに、コロナを受け入れた病院が倒産するという実積を積み上げる日本政府。他の病院がコロナ患者を受け入れなくなるのは当然の帰結。コロナは天災だけど、医療逼迫は政府の無作為が原因です》と持論を展開したことで、さらに波紋が広がることになった。

 ところが同日、医療法人の理事長がHP上に、倒産の原因は「過去の設備投資に伴う過大な有利子負債など経営の稚拙さに起因する」と説明。「コロナ患者の受け入れが経営を圧迫した事実はない」とコメントしたことで、SNS上には、帝国データバンクによる調査不足を指摘する声、さらには報道したメディアを「先走り」「ミスリードか?」と批判する声が広がった。

 前出の記者が語る。

「たしかに、今回のケースは理事長自身が否定しているので、おそらく真相はその通りなのでしょうが、民間病院の場合、当然のことですが病床100%稼働が望ましいわけです。ところが、コロナ患者は隔離が必要なため、ICU管理・大部屋を一人で使う場合もあり、そうなると稼働率が著しく低下してしてしまいます。しかも、本来なら病院の売上の中核を担う、慢性疾患の検査や手術が延期になることで、現金収入が入ってこない。一方、医療スタッフの人件費、使い捨てのガウン、フェイスシールド等の必要経費のほか、コロナ患者を担当するスタッフには1時間あたり別額で危険手当を出している病院は少なくありません。そうなれば、経営が逼迫するのは当然のこと。新型コロナ感染症患者の割り当て病院には、1床あたり最大1950万円(重症者病床)という国からの人件費補助があるとはいえ、今後コロナ患者を受け入れたことで倒産する病院が出てくる可能性は否定できません」

 コロナとの戦いが始まって1年半。精神的、肉体的にも限界間近と言われる医療従事者のためにも、国によるさらなる支援体制が一日も早く整うことを願いたい。

(灯倫太郎)

*写真はイメージ

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