業種別では、すべての業種で倒産が増加している。最多は日本料理店や中華料理店、焼き肉店、ラーメン店などを含む「専門料理店」の213件(前年比80.5%増)。とりわけラーメン店は顕著で、倒産が45件(前年比114.2%増)、休廃業が29件(同31.8%増)で、いずれも過去最多を更新している。
そもそもラーメン店は、少ない開業資金で参入しやすいと言われる。倒産した店の資本金も「1000万円未満」が40件(構成比88.8%)、従業員数も「5人未満」が39件(同86.6%)と、小・零細規模が大半を占めているのだ。
「寿司店のように長期間の修業を必要とせず、比較的開店までたどり着きやすいという側面も影響しているのでしょうか。寿司職人は修業期間に、技術だけでなく素材管理や原価管理などを学ぶことが多いですからね」(ライター)
消費経済アナリストの渡辺広明氏はこう分析する。
「都心は人件費が異常に高騰し、原材料費も上がりました。そのため価格に転嫁せざるをえない。ラーメン店は1杯1000円以上が当たり前になってきている。それに耐えられる店と、そうではない店とではっきり明暗が分かれています。ただでさえ、ラーメン店は3年で8割が倒産すると言われている。その店でしか食べることができない、差別化されたメニューやサービスがあるかどうかが問われているのです」
都内のラーメン激戦区で、煮干し系のラーメンを提供する人気店の店主はあえなく撤退に追い込まれた。
「(出汁で使う)煮干しの原価が倍に跳ね上がって、お客さんが多く訪れても利益が出ないんですよ。何とかリーズナブルな価格で仕入れをしようとすると、一定のブランドではなくなるため、日によってスープの味が変わってしまう。元々立地を考えて家賃の高いエリアに店を構えてしまったため、一度撤退して移転先を探すことになりました」
乾物である煮干しは長期保存が可能で、かつお出汁よりも廉価。だからこそ出汁として扱っている、そんな店主の気持ちを嘲笑うかのような災難である。
悪いことが積み重なったアフター・コロナの飲食業界。今後は、「客足離れ」を防ぐ方策を考える時期に直面している‥‥。
「週刊アサヒ芸能」3月14日号掲載