出勤前の「朝焼肉」も定着!? 倒産件数「過去最少」を記録した焼肉店の勝因

 2020年の焼肉店の倒産件数が過去10年で最少だったと信用調査会社「東京商工リサーチ」が1月15日、明らかにした。新型コロナウイルス感染拡大の影響で飲食店の他業種では軒並み倒産件数が過去最多を記録する中、焼肉店の快進撃に驚きの声があがっている。

「昨年の焼肉店の倒産は14件となり、前年の21件から33%も激減しました。居酒屋の189件、ラーメン店の46件と比べても圧倒的に倒産が少ないのがわかります。また、倒産した14件すべてが個人企業を含む資本金1000万円未満、従業員10人未満の小・零細規模だったことも明らかになっており、焼肉店はコロナの影響を受けなかったどころか、むしろ追い風になったと言っても過言ではないでしょう」(経済ジャーナリスト)

 1回目の緊急事態宣言が出た昨年4月は焼肉店も売上が大きく落ち込んだが、次第に客足は戻り始め、11月には焼肉店の売上高は前年同期比で2カ月連続のプラスを記録するなど好調で、居酒屋チェーンを展開するワタミは居酒屋120店を新業態「焼肉の和民」に転換することを発表するなど新規参入も多く見られる。

「コロナ禍に焼肉店がひとり勝ち状態だった原因は、排煙装置による換気にあります。多くの焼肉店に導入されている無煙ロースターなどの排煙装置は約3分半で客室全体の空気を入れ替えられると言われているため、コロナを気にせず食事が楽しめるのです。昨年の緊急事態宣言の解除後は『焼肉ライク』など一人焼肉から徐々に客が戻っていきましたが、家族でたまの外食をする際にも安全性の高い焼肉が選ばれることも増え、ファミリー層の利用が急増したことで一気に売上が上昇したのではないでしょうか」(前出・経済ジャーナリスト)

 焼肉といえば夜が定番だったが、ランチばかりか朝食の選択肢のひとつにもなりそうだ。

「すでに『焼肉ライク』では首都圏の一部店舗で『朝焼肉セット』(税別500円)を提供していますが、以前なら匂いを気にして出勤前の朝から焼肉なんて考えられなかったこと。出勤するにしても、マスク着用でソーシャルディスタンスを心がけていることから、それほど周囲の匂いも気にならなくなったのもブームの要因では…。テレワークならなおさら焼肉の匂いを気にしなくて済みますからね」(フードライター)

 暗い話が多い飲食業界のなかにあって、少なからず希望の光となりそうだ。

(小林洋三)

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