23年は「人手不足」関連倒産が、集計を開始した13年以降で最多の51件(前年28件)を記録している。東京商工リサーチ情報本部の松永伸也氏が言う。
「コロナ禍でアルバイトや パートなど従業員を削減せざるをえない店が多かった。そうしたスタッフが、すでに他の職に就いていて戻ってこない。そのため、たとえ宴会シーズンで予約が入っても、人手が足りず、さばききれなくなります。それを見越して予約が入っても断り、満席の半分程度の客しか入れず、その上で時短営業までせざるをえない店まであるんです」
人手こそ飲食店にとって、営業を続けていくための根幹と言っていい。とはいえ、最低賃金改定に伴う人件費の上昇も収益を圧迫しているのだ。
さらには2年前、コロナ禍と並行してロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まった。以来、外国の戦争さえも飲食業にとっては大きなマイナス要因となっている。エネルギー価格の高騰が光熱費のみならず、食品全体にも影響を与えたのだ。「物価高」倒産は22年の6倍超となる59件に達している。飲食業を取材するライターが語る。
「客離れが激しい今、食品ロスを減らすために自衛を求められるようになった。メニュー数を絞って食材を減らすことはもちろんですが、客入りが悪くない日だけの営業に限定する店も出ています。都内の住宅街に構える居酒屋は、月曜定休から金土日の週末のみ営業という苦肉の策を取っている」
一部の国会議員が税金なしの裏金をせしめている一方で、崖っぷちの飲食店は実に涙ぐましい努力を続けているのだ。
「冬でも水で食器を洗っている。卵も以前は市場で買っていましたが、毎日、チラシでチェックして、安いスーパーを回っています。生ビールの樽缶は仕入れ先を変えたら500円安くなりました。うちは家賃がなくて、家族経営だから何とかやっていけていますが、苦しいのは変わらない」(都内の中華料理店従業員)
同じく、食堂の店主もこう嘆く。
「惣菜やお弁当に使うパックの容器も値段が上がった。あれは石油を使っていますからね。これが結構バカにならない。常連さんの中にはそうした事情を知ってか、容器を持参してくれる人もいます」
パックの容器といえば、コロナがまん延して以来、「ウーバーイーツ」をはじめとするデリバリーが流行し、イートインからテイクアウトに特化するようになった店舗も増えた。
ところが23年、倒産増加率で「持ち帰り飲食サービス業」が55件で前年比175%増、「宅配飲食サービス業」が67件で97%増と急増したのである。
「当時、国が『事業再構築補助金』を出して事業転換を促したことで、これらの業種が増えましたが、競合店が多くなりすぎましたね」(松永氏)
(つづく)