「プリゴジンの乱」仲裁で“プーチンの犬”から立場逆転!ルカシェンコ氏の思惑

 ロシア国内での武装反乱から一転、部隊を撤収し、その後の消息が途絶えていたワグネル代表プリゴジン氏が隣国ベラルーシに入国したことを27日夜、ルカシェンコ大統領が明らかにした。

 ベラルーシの国営通信によれば、ルカシェンコ氏は「ワグネルの指揮官たちは戦闘の最前線にいたので、こちらに来れば重要なことを教えてくれるだろう」と述べ、ワグネルに部隊の宿営地を提供する考えも示したという。

 モスクワまでわずか200キロ手前での部隊撤退という、まさに一触即発の事態を仲介したルカシェンコ氏だが、同氏がプーチン氏から「厳しい状況にあること」を聞かされたのは、24日朝のこと。ルカシェンコ氏はさっそく、ロシア連邦保安庁(FSB)を通じ、プリゴジン氏の連絡先を入手。ロシア南部ロストフ州にいたプリゴジン氏と接触を試みたとされるが、

「当時、プリゴジン氏は一切電話にも出なかったことから、プーチン氏も接触は不可能とみていた。ところが、ルカシェンコ氏がかけた電話にはすぐに出たというんです。そして交渉の末、急転直下の部隊撤退が実現するわけですが、ベラルーシ国営通信によれば、プーチン氏はルカシェンコ氏に対し電話で深く謝意を伝えたとか。とはいえ、これまでルカシェンコ氏は戦術核配備も含め、プーチン氏の言いなりになる『プーチンの犬』とまで揶揄されてきた人物ですからね。プーチン氏のプライドが傷つけられたことは間違いない。おそらく、その矛先はプリゴジン氏に向かうでしょうから、今後もこの2人の動向からは目が離せません」(ロシアウオッチャー)

 今回の撤退劇に関し、ルカシェンコ氏が提案した条件は、ワグネル戦闘員の安全保障を含め複数あったとされるが、プリゴジン氏は27日、SNSのメッセージで「ルカシェンコ大統領が、法的な管轄の下でワグネルが活動をするための解決策を見つけることを提案した」と発言している。端的に言ってこれは、ロシアでは“非合法”だった民間軍事会社ワグネルが“合法的”に活動出来ることを意味するわけだ。

「そもそも、ワグネルが正規軍の指揮下に入ることを強要されてきた理由は、野心を増すプリゴジン氏の排除とともに、ワグネル自体が非合法組織だから。仮に、ルカシェンコ大統領の下で合法的な組織として存続できれば、プリゴジン氏にとってメリットは極めて大きいでしょう。一方でプーチン氏は、プリゴジン氏に散々コケにされ、ルカシェンコ氏には大きな借りを作り、さらにモスクワまであと200キロにまで迫られたことで国民からの求心力低下が計り知れない。独立系メディアは、怒り心頭のプーチン氏に側近さえも近づけない状態と伝えていますが、この元凶を作ったプリゴジン氏をプーチン氏は絶対に許さないでしょう。また血で血を洗う戦いになりそうです」(同)

 部隊は撤退したものの、プリゴジン氏はそれ以上の最悪の火種を残したようだ。

(灯倫太郎)

*画像はプリゴジン氏のSNSより

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