北朝鮮の武器をベラルーシに…「3カ国協力」のヤバい中身と、プリゴジン死亡後のルカシェンコの焦り

 プーチン大統領との首脳会談後、軍事関連施設などを視察、17日に帰路に就いた北朝鮮の金正恩総書記。代わってプーチン氏は15日、ロシア南部ソチでベラルーシのルカシェンコ大統領と会談し、露朝首脳会談の結果を伝えた。

 タス通信などによれば、プーチン氏は「北朝鮮は我々の隣人であり、我々は良い隣人関係を作らなければならない。韓半島(朝鮮半島)状況に関し、我々は何も違反しておらず、そのつもりもない」と述べ、北朝鮮との間で兵器や軍事技術を取引したとする西側の報道を否定。国連安保理常任理事国という立場にある中で、対北朝鮮制裁決議に違反することはないと強調したとされる。
 
 むろんこれは西側に向けた表向きのコメントであることは言うまでもない。その証拠にベラルーシ国営ベルタ通信は、ルカシェンコ氏がこの会談を「素晴らしい」と称賛し、「今後はロシア、ベラルーシ、北朝鮮の3国が協力する案を考えられる」として3国間協力を提案したと伝えている。

「同氏が何をもって『3国間協力』と言ったのかは不明ですが、ウクライナ侵攻で欧米諸国との対立が深まる中での発言ですからね。当然、北朝鮮とロシア間の武器取引が、ベラルーシを隠れ蓑として進められる可能性が考えられます。たとえば、北朝鮮がベラルーシに武器を供給し、その代わりにベラルーシが自国の武器をロシアに提供する三角協力方式も可能になる。さらには、ベラルーシ国内にはワグネルの兵士が相当数残っていますから、彼らに北朝鮮製の武器を提供し、再参戦させる可能性もある。3国間協力の中身が非常に気になるところです」(国際部記者)

 むろん、米国もこうした動きには鋭く目を光らせており、国家安全保障担当のサリバン米大統領補佐官は15日の記者会見で「(3カ国協力について)いまは言葉だけだが、われわれはそれが行動の側面でどのように現れるのかを見守るだろう」とコメント、監視態勢を強化するとしている。

「実は、この3国間協力を積極的に推進しているのが、ベラルーシのルカシェンコ氏だというんです。というのも、ルカシェンコ氏は『ワグネルの乱』の際、プリゴジン氏を説得しクレムリンへの進軍を収束させたことで、一度はプーチン氏に大きな恩を売り、ロシアに対する政治的信用も高まった。しかし、先月プリゴジン氏が暗殺されたあとは、もはや何事もなかったかのように2人の関係は元に戻っている。しかもプーチン氏は、短期間とはいえルカシェンコ氏に頭が上がらない立場が屈辱的で、プリゴジン氏死亡後は前以上に対応が厳しくなったと言われます」(同)

 つまりルカシェンコ氏としては、ここでもう一度プーチン氏の気を引くために3国間協力を提案したというのである。悲しいかな、ロシアに経済も政権維持も全面的に依存するベラルーシとしては、プーチン氏にへそを曲げられたら最後、国が成り立たなくなってしまう。金正恩氏のロシア訪問でルカシェンコ氏の焦りが見え隠れする中、今後の3国間協力の中身がどう推移するのか懸念はぬぐえない。

(灯倫太郎)

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