プリゴジン氏率いるワグネルの反乱中止から一夜明けた25日、ベラルーシ国営ベルタ通信は、ルカシェンコ大統領がプーチン大統領と電話で協議し、プリゴジン氏の処遇について協議した可能性がある、と報じた。
一方、24日夜以降、動静不明だったプリゴジン氏が26日、SNS上に音声メッセージを公開。今回の進軍の直接の引き金になったのは、露軍がミサイルとヘリコプターでワグネルのキャンプを攻撃し、約30人の兵士を殺害されたことであり、「政権転覆のために進軍したのではない」として、反乱がプーチン政権に向けられたものではないことを強調。部隊撤収は「ロシア兵の流血を避けるためだ」と、改めて自身の正当性をアピールした。
この音声データがいつ、どこで録られたのかはわからないが、すでにベラルーシに出国したとする独立系メディアの報道もあり、その動向は謎のままだ。
そんな中、「ワグネルの乱」勃発の最中に、ロシア国内にいるオリガルヒと呼ばれる新興財閥の大富豪複数名が、国外に脱出していたことが明らかになった。
「このニュースを報じたのは、『IStories』というロシアの調査報道機関で、その一人が推定資産35億ドル(約5000億円)の建設業界の雄、アルカディ・ローテンベルグ氏です。同氏はソチ冬季五輪をはじめ、クリミア大橋などの建設を受注した会社のオーナーで、プーチン氏とは柔道仲間。現在、米国や英国などから制裁を受けているいわくつきの人物です」(ロシアウォッチャー)
また、非鉄金属大手ノリリスク・ニッケルの大株主で、推定資産237億ドル(同3兆3800億円)という大富豪のウラジーミル・ポターニン氏も、24日午後にモスクワを出発し、トルコのイスタンブールに向かった、と伝えている。
「ほかにも、複数の大富豪がロシアを出国しているという情報があり、その理由は政変や粛清など国内の混乱を避けるため、と考えて間違いないでしょう。ただ、一部大富豪の中にはワグネルと深い関係を持ち、彼らを資金的にバックアップする者もいたといいます。中には『ポストプーチン』としてプリゴジン氏を支援する動きもあったようですが、ここにきてプーチン氏がプリゴジン氏を『裏切り者は残忍な処罰を受ける』と宣言した以上、自らにも火の粉が降りかかりかねない。実際これまでも、オリガルヒや要人の不審死が相次いでいましたからね。そんなこともあり、暗殺を恐れたオリガルヒたちが一時避難のために国外脱出したと見る向きも少なくないのです」(同)
もはや何がなんだかわからないロシアの国内情勢。ただ一つ言えることは、「ワグネルの乱」によってプーチン政権の権力基盤のもろさが露呈したことだろう。
(灯倫太郎)