ロシアの民間軍事会社ワグネルを巡り、またしても国内外で不穏な動きが広がっている。
今年6月に勃発した「プリゴジンの乱」以前には、兵員約2万5000人を投入、ウクライナ東部ドネツク州バフムトの攻略などで暗躍したワグネル。しかし、正規軍との軋轢の中、昨年5月にはバフムトから撤退し、一帯をロシア軍に引き渡していた。
ところが、最近になり、バフムトをはじめウクライナ東部の前線に、数百人を超えるワグネル傭兵が復帰しているという情報が駆け巡っているのだ。
「これは、ウクライナ軍東部部隊の報道責任者であるセルヒイ・チェレバティ氏が、9月27日に伝えたもので、南部攻勢を指揮する将官の間からも同様の情報があがってきているようです。元戦闘員らは、その多くが部隊ではなく個人として参戦しているようで、主にロシア国防省やその関連組織で働いているとみられています。ただ、少なくなったとはいえ、まだ戦術に長けた筋金入りの傭兵も残っていますからね。ウクライナ軍としてもロシア軍の兵力強化に繋がらないか、神経を尖らせているようです」(ウクライナ問題情報通)
反乱以降、多くのワグネル傭兵らはベラルーシに移ったとされるが、8月にワグネル創設者のプリゴジン氏が搭乗したとみられる旅客機が墜落。その後は、絶対的指導者不在のまま、離反者も急増していたとされる。だが、現在もなお「プリゴジン氏生存説」は国内外でまことしやかに囁かれ、死亡したのは替玉でプリゴジン氏は、海外に潜伏しているという噂は後を絶たない。
「ロシアの政治学者バレリー・サラベイ氏の談話を伝えた英デーリーメール紙によれば、死亡したのは、プリゴジン氏の替え玉の1人とされるレオニード・クラサビンという人物ではないかとのことです。むろん信ぴょう性は定かではないものの、他にも、替え玉らしき人物の写真を紹介したTikTok動画も大バズリするなど、いまだプリゴジン氏に対する関心は高く、ワグネル内にも、相当数の支持派がいるとみられています」(前出・情報通)
そんな中、プーチン氏とワグネルの幹部だったアンドレイ・トロシェフ元司令官とが28日に会談したと、ロシア大統領府が公式に発表した。同氏は内務省出身の元大佐で、飛行機墜落事故で死亡したとされるドミトリー・ウトキン司令官に次ぐナンバー3だという。
「以前からプーチン氏は、トロシェフ元司令官にワグネルの全件を委任し、巧みに操る計画を立てていたようですね。ただ、ワグネル内のプリゴジン支持派による反攻の懸念もあり、正式には任命できなかった。しかし、今回、同氏を大統領府に呼んだことを公に発表したということは、ワグネルを部隊として再び前線に投入することを正式に認めたということになります。逆に言えば、兵士不足がそこまで逼迫しているということでしょう。政府が29日にウェブサイトにアップした情報によれば、プーチン氏は、秋の定期的な徴兵期間に13万人を徴集する法令に署名したとのこと。この流れをみても、まだまだ戦争を終わらせるつもりがないことは明らか。10年間は終わらないという専門家の指摘は、あながち間違いではないかもしれません」(前出・情報通)
ワグネルとしても、ウクライナの前線へ返り咲くとなれば、当然、傭兵の補充は必要で、アフリカに派遣している兵をロシアに帰国させる計画も浮上しているという。そんな中、西アフリカの国・マリの空港でワグネルの傭兵を乗せていたとみられる大型輸送機が爆発するという事態も起きている。
戦争の行方はいまだ混沌としており、帰趨するところを知らないのである。
(灯倫太郎)