ベラルーシ国内で「ワグネル」再出発も、プリゴジンを待ち受ける「内部の暗殺者」

 突然始まり、突然終わったロシアの民間軍事会社ワグネルによる週末の反乱。創始者のプリゴジン氏は隣国ベラルーシに出国。ロシア内に残された兵士らのベラルーシへの移動も始まっていると伝えられる。

 すんでのところでルカシェンコ大統領に救われ、大きな借りをつくってしまったプーチン大統領。その怒りが収まるはずもなく28日、突然「これまでロシアはプリゴジンの企業グループに年間800億ルーブル(約1350億円)を支払っていた」と暴露。不透明な金の流れについて「これから全てを調査していく」として、プリゴジン氏と関係がある軍関係者をはじめ、企業、オリガルヒなどすべての関係者を洗い出し、徹底してアラ探しすることを明らかにした。

 一方、仲介役として手柄を立てたことでご満悦なのが、ルカシェンコ氏だ。連日のように国営通信に登場しては、反乱を収めるためプリゴジン氏に対し具体的にどのような警告をし、どんな攻防戦が繰り広げられたのかを事細かに説明。プーチン氏には“抹殺”を思い留まらせたとまで明かし、言葉は悪いが、まさに英雄気取りといった表現がふさわしいようにも見える。

 ところがそんな中、突然の部隊撤退を決断したプリゴジン氏に対し、ワグネル内部からは「我々は裏切られた」「プリゴジンは裏切り者だ」との声が続出、同氏に背を向ける兵士も増え始めているというのだ。

「これは英BBCが現地時間の26日、探査報道チーム『ベリファイ』がテレグラムなどSNSのメッセンジャーを分析した結果として伝えたものですが、それによれば、多くの兵士が《プリゴジンは自らの手でワグネルを破壊した》《彼は全ての人を駄目にした》《無意味な反乱だった》などとSNS上に投稿。さらに、兵士らの家族が集まる掲示板上にも《プリゴジンを信じていたが、彼の行動は不名誉だった》《ただの裏切りである》といった非難の声が相次いでいるというんです。兵士の中には、ロシア正規軍に目の前で仲間を殺された者もいて、だからこそ軍上層部を血祭りにあげてやると決起し、プリゴジンも『我々は死ぬ覚悟はできている』とまで言い切っていたわけですからね。ところが、舌の根も乾かぬ一夜にしての掌返しです。はしごを外された下で働く兵士の間から批判の声が上がるのは当然のことでしょうね」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)

 独立系メディアでは、ワグネル兵士の中にはすでに退役したり、ベラルーシには移動せず、ロシアに残って別の民間軍事会社への転職を模索している者もいる、と伝えている。専門家によれば、プリゴジン氏が最も懸念しているのが、そうした反乱分子による暗殺計画だという。

「粘着質のプーチン氏が、このままプリゴジン氏を許すとは到底考えられない。なので、ワグネル内部の人間を使ってクーデターを起こさせ、プリゴジンを亡き者にする、というシナリオがあっても全く不思議ではない。ただ、ワグネルはプリゴジンあっての会社。彼がいなくなれば、すなわち消滅を意味します。ワグネルを受け入れたルカシェンコ氏としては、まだまだ利用価値があるため、簡単に死なれては困る。プリゴジン氏がベラルーシに移ったところで、三者三様の思惑が入り乱れ、まったく先が読めない状況が続くことになるはずです」(同)

 結局は、魑魅魍魎の世界からは逃れられない!?

(灯倫太郎)

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