ウクライナ国防省情報機関のトップが、英スカイ・ニュースのインタビューで、プーチン氏が「がんやその他の病気を患っている」とする分析を明かしたのは14日のこと。それを受け英紙タイムズ(電子版)もこの日、一部報道機関が入手したロシア新興財閥「オリガルヒ」男性の録音ファイルを引用する形で、プーチン氏が「血液のがん」にかかっている可能性があると報じた。
とはいえロシアの苦戦によりここ最近、「プーチン氏重病説」や「クーデター計画説」等々、情報ソースがハッキリしない憶測報道も多く、情報戦の一環とみる向きもある。そんなプーチン政権に吹き始めた強い向かい風に対し、敏感な立場を示しているのがロシアの同盟国、ベラルーシだ。
「ベラルーシのルカシェンコ大統領は不正選挙により、国内で反ルカシェンコ運動が起きた際に、それを抑えてくれたのがプーチン氏で、多大な恩があり頭が上がらない。ところがそんなルカシェンコ大統領が、例年必ず参列しているロシアの対ドイツ戦勝記念日に参加していなかった。これは異例のことです」(ロシアに詳しいジャーナリスト)
さらには報道陣に対し9日、「自国内で領土、家族、子供のために戦う国民を打ち負かすのは不可能だ」と語るなど、ロシアの軍事侵攻が失敗に終わるとも取れる発言したことで、ロシア語圏のSNSで物議を醸した。
「これは戦勝記念式典の後、報道陣から『北大西洋条約機構(NATO)側がベラルーシへの軍事圧力を強めているが大統領の見解は?』と訊ねられて答えたものですが、これまでのプーチン氏とルカシェンコ氏との関係を考えたら、表だってこのような発言をすることはありえないことでした。たしかにルカシェンコ氏はロシアに忠誠を示しつつも侵攻には否定的で、国内会議などでも『露軍は独力で目標を達成できる。助太刀は不要だ』と繰り返し発言。ロシア側を持ちあげつつも、この戦争には参戦しないというスタンスを明らかにしてきました。その背景にあるのは、むろん米欧側との決定的対立で、さらなる国内の不安定化を招く危険を避けたいという思いがあることは言うまでもありません。ルカシェンコ氏にはプーチン氏に対し並々ならぬ義理があるというものの、ここにきて『プーチン氏重病説』や『クーデター計画説』が連日報道されるようになり、プーチン氏と距離を置くようになった可能性も否定できませんね」(同)
もともとベラルーシとウクライナは同じ東スラブ系の友好国で、以前はルカシェンコ大統領とゼレンスキー大統領との関係も悪くなかったとされる。
「だからといって、ベラルーシが即ロシアを見限ってウクライナにつくとは考えづらいものの、ウクライナとロシアを天秤にかけ、勝ち馬に乗りたいと考えている可能性は否定できないでしょう。戦争により世界の構図が変わることは歴史が証明するところ。どの国も、自国のことを考えれば、この先何が起こるかはわからないということです」(同)
まさに昨日の敵が、今日の友になる!?
(灯倫太郎)