いよいよ打ち上げ最終段階!金正恩がミサイルより「軍事偵察衛星」に固執する驚くべき理由

 先月18日に衛星開発を担う国家宇宙開発局を現地指導して以来、公の場に姿を見せなかった北朝鮮の金正恩党総書記が16日、娘のジュエ氏を伴い、「軍事偵察衛星1号機」を現地視察したことを17日付の労働新聞が伝えた。

 軍事偵察衛星の開発は、金総書記が2021年1月に発表した「国防5か年計画」のなかでも「最優先の国防力強化政策」と掲げる肝いりの案件。

 労働新聞によれば、衛星打ち上げは「結束(最終)段階」に入っており、金総書記は「米帝と南朝鮮傀儡悪党の反共和国対決策動が強まれば、我々の主権と正当防衛権が堂々と攻勢的に行使されるだろう」と両国を牽制している。

「金総書記が朝鮮労働党の中央委員会総会で行った演説で、『これから間もない間に、共和国初めての軍事衛星を発射する』とブチ上げたのは22年12月のこと。軍事偵察衛星とは、相手国上空から画像撮影や電波傍受が可能な人工衛星で、仮に北朝鮮がこの衛星を使って米軍や韓国軍の詳細な動向を把握できれば、北朝鮮にとって大きなメリットとなり、逆に米韓にとっては北朝鮮への抑止力低下が免れません。金総書記としては何がなんでも、この軍事偵察衛星を完成させたいと考えているのです」(北朝鮮ウオッチャー)

 では、北朝鮮がこの衛星を利用して掴みたい米韓の情報とは具体的に何なのか。それが、空母などのリアルタイムの動向だという。

「朝鮮半島有事となれば、当然、両軍が陸地にある基地や司令部などを攻撃の標的としてくるはず。その際に、攻撃起点である航空母艦などの位置がリアルタイムで把握できれば、そこをダイレクトに叩ける。現在、北朝鮮は『人工衛星打ち上げ』という名目でICBM(大陸間弾道ミサイル)を開発し、すでに射程1万5000キロの『火星17型』をもち、陸地の攻撃に対応。これに加えて、米韓空母の動きを的確につかめる人工衛星を持てば、海からの脅威も排除できるわけです」(同)

 これを受け、米国務省のベイダント・パテル副報道官は記者会見で、「弾道ミサイル技術を使用する北朝鮮のすべての発射には、衛星を宇宙に打ち上げるのに使用されるSLV(宇宙発射体)も含まれ、国連安全保障理事会決議違反だ」と述べ、断固として対抗する姿勢を示した。

 日本の防衛省も、衛星が日本領域内へ落下する事態に備え、自衛隊に「破壊措置準備命令」を発令。もちろん、広島サミット開催中に打ち上げられれば、国際社会はさらなる制裁措置に踏み切ることは必至だ。

(灯倫太郎)

ライフ