「対米共闘」の裏で利害が衝突…中央アジア、極東、北極圏で中国とロシアが一触即発!

 中露は米国への対抗軸として共闘関係を築いているが、地政学的観点から見ると、両者の間には決して相容れない重大問題が潜んでいる。特に、中央アジア、極東・シベリア、北極圏における利害の衝突は顕著だ。

 中央アジアは中露の影響力競争の最前線と言っていいだろう。中国は「一帯一路構想」のもとに、カザフスタンやウズベキスタン、トルクメニスタンなどで大規模なインフラ投資を展開し、鉄道やパイプラインの建設を通じて経済的な支配力を強めている。これに対しロシアは、ユーラシア経済連合(EAEU)や集団安全保障条約機構(CSTO)をテコに、旧ソ連諸国を自らの勢力圏に繋ぎ止めようとしている。

 特にカザフスタンは、ロシアにとっては軍事、歴史的に欠かせないパートナーだが、中国の投資がその影響力を浸食しているというのが実情だ。

 極東・シベリアでも経済的緊張が高まっている。中国は、ロシアの豊富なエネルギー資源を求め、天然ガスや石油の供給に依存しつつ、同時並行で極東地域への経済進出を加速させている。

 ロシアはこうした中国の資金を歓迎する一方で、人口流出が進むこの地域での中国移民の増加に神経を尖らせている。

 北極圏もまた、中露の競争が浮き彫りになる舞台だ。気候変動による北極航路の開通と資源開発の可能性は、この地域の地政学的価値を急増させているが、ロシアは北極海沿岸の軍事拠点強化と北極航路(NSR)の管理を通じて戦略的支配を確立させた。対する中国は「氷上シルクロード」を掲げ、航路へのアクセスと資源開発への参入を狙っている。

 ロシアは中国の投資を必要としているが、中国の北極進出は、欧米との連携を深める可能性も孕んでいるため、ロシアは安全保障上の懸念が払拭できないでいる。両国は共同声明で北極協力の意を表明しているものの、実際にはロシアの排他的姿勢と中国の野心がぶつかり合っているのだ。

 中央アジアでの主導権争い、極東での経済的浸透への警戒、北極圏での戦略的競争は、両国のパートナーシップが一枚岩でないことを示している。両国は協力を喧伝しつつ、互いの動きを監視するという複雑な関係だ。長期的には、これらの問題が共闘の限界を露呈させる可能性も秘めている。

(北島豊)

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