異例の統合シーズンとなった20-21年の国内女子ゴルフツアーで、今年早くも2勝をあげ、獲得賞金が1億円を突破した小祝さくら。度胸満点のショットでライバル勢を蹴散らす一方、ほんわかしたトークでオヤジ心をくすぐりまくる。そんな「黄金世代」屈指の天然娘のマル秘伝説をお届けしよう。
【1】異名は「スイングマシーン」
渋野日向子(22)や原英莉花(22)など、今や女子ゴルフ界を席捲する「黄金世代」。その中で頭一つ抜きん出た存在になりつつあるのが小祝さくら(22)だ。
3月にスタートした国内女子ツアー3戦のうち2戦で優勝(3月21日時点)。スポーツ紙記者も舌を巻くほど無類の勝負強さで、猛烈ダッシュを決めている。
「20年が終了した時点での賞金ランキングは4位。ただ小祝は、開幕戦『ダイキンオーキッドレディス』が行われるコースとの相性が悪く、18年が予選落ち、19年は17位タイ。なので、さほど注目されていませんでした。今年も3月4日の初日は20位タイでしたからね。ですが2日目から徐々に順位を上げていき、最終日には、森田遥(24)や西郷真央(19)とのデッドヒートを制して14アンダーで優勝。苦手コースをみごとに克服しましたね」
翌週の「明治安田生命レディス ヨコハマタイヤ」は23位タイと振るわなかったが、3戦目の「Tポイント×ENEOS」で今年2勝目を飾り(20─21年シーズンでは3勝目)、獲得賞金はすでに1億円を突破。「賞金女王」の座も見えてきた。
はたして好調の要因は何なのか。ゴルフジャーナリストの宮崎紘一氏が解説する。
「スイングの再現性がピカイチですね。『スイングマシーン』の異名がつくほどショットが安定している。象徴的だったのは3戦目の最終日の15番ホール(パー4、277ヤード)。最大瞬間風速が10メートルを超える強風を嫌がって、アイアンやユーティリティーで距離を刻む選手が多い中、小祝はドライバーを選択しました。グリーンの右前には池があり、それを嫌がって引っ張りすぎると左前のバンカーに入る可能性もあるのに。この選択には、中継していた解説者を含め一同、驚愕していました」
結果、1オンとはいかなかったが、首位に並ぶバーディーを獲得。さすが「スイングマシーン」である。
【2】勝敗を左右する攻撃的な「決断力」
優勝を引き寄せたドライバーの選択について、ゴルフライターが耳打ちする。
「帯同したキャディーは、どのクラブを選択するのか最後まで決められなかったそうです。首位グループを1打差で追う展開でしたが、刻んで無難にパーを取る選択肢もあった。ですが小祝は『バーディーを狙いたい』と、ドライバーを握る決断をした。あまりにもリスクの大きい選択に、キャディーは肝を冷やしたそうです」
こうした攻撃的な決断力も小祝の武器であり、続く16番ホールもバーディーを奪い、首位に浮上した。
「一緒に回っていた淺井咲希(22)は、最終日の折り返し時点で10アンダーの首位でしたが、小祝の追い上げによるプレッシャーにやられたのか、最後は3アンダーで20位タイにまで順位を下げてしまった。終盤、表情がこわばる選手ばかりの中、小祝だけは終始ニコニコ。まるで弥勒菩薩を見ているような穏やかさがありました」(宮崎氏)
小祝のトレードマークである「ほほえみ」も、ライバル勢にとっては重圧になるのかもしれない。
【3】勤勉な理論派でコースを徹底攻略
見た目はのほほーんとしている小祝だが、実は理論派の顔を隠し持っている。
「とにかく引き出しの多い選手です。天気や芝生の状況に応じて、クラブの持ち方やフォームなど、七変化させることができる。先の開幕戦では、わざと60ヤードの距離が残るように、セカンドショットを刻むテクニックを見せる場面もありました。原英莉花や笹生優花(19)のように300ヤード近く飛ばすパワーがない分、戦略を立ててショットを決める術に長けています」(ゴルフライター)
計画的なコースマネジメントには当然、下準備も欠かせない。
「小祝のコースメモには、文字がビッシリ書き込まれています。ラフやグリーンの芝生の具合や傾斜に至るまで、とにかく細かい。キャディーに丸投げする選手もいる中、みずからデータを収集する勤勉な一面があるんです」(スポーツ紙記者)
小祝の開幕戦は、総飛距離の平均が259ヤード。出場選手の中でトップ20にも入らなかったが、飛距離を稼げなくても優勝した裏には、こうした地道な作業があったわけだ。