かつては日本各地で運行されていたブルートレインをはじめとする夜行列車。列車内で夜を明かすのは何事にも代えがたい体験で、乗る前からワクワクしていた人も多いはずだ。
しかし、鉄道の高速化や新幹線が地方にも延伸したこと、より短時間で移動できる航空機や安価な深夜バスの利用が増えたことで衰退。現在、定期運行する寝台列車は、東京と出雲市・高松を結ぶ、「サンライズ出雲・瀬戸」の1日1往復のみとなっている。
しかし、2013年にJR九州が「ななつ星in九州」、17年にはJR東日本が「TRAIN SUITE 四季島」、JR西日本が「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」、他社路線にも乗り入れる東急の「THE ROYAL EXPRESS」が相次いで運行開始。ただし、いずれも船旅の列車版とも言えるクルーズトレイン。費用も1泊2日で数十万円からと高額だ。
この他、16年まで上野―札幌間で運行していたカシオペアの車両を使った「カシオペア紀行」もあるが、こちらも新幹線や特急に比べると割高。ちなみに、いずれも臨時団体列車という扱いで、JRではなく旅行会社が募集を行っているケースもある。
そうした中、一方で20年にはJR西日本が比較的手頃な料金で乗車できる「WEST EXPRESS 銀河」を投入。また、“地方鉄道再生請負人”の異名を持つ鳥塚亮氏が社長に就任した静岡の大井川鐡道は、「SL夜行列車」を企画。24年6月まで社長を務めていた新潟県のえちごトキめき鉄道時代にも国鉄時代の車両を使った「夜行急行」を運行している。
「クルーズトレインにイベント列車と形は変わりましたが、夜行列車は一時期に比べると息を吹き返しています。臨時列車で毎日運行するわけではないので、需要と供給のバランスが取れているのでしょう」(旅行誌編集者)
3月28~29日には、JR東日本びゅうツーリズム&セールスが企画した「夜行列車乗車ツアー」が開催。上野駅から高崎線・上越線・羽越本線を経由して秋田駅に向かうルートで大勢の鉄道ファンが参加した。
鉄道業界も移動の目的手段としてではなく、夜行列車の旅を楽しみたという人向けに可能性を見出している。定期運行の列車と違って企画しやすいため、イベント夜行列車が今後さらに増えることを期待したい。
※画像は、JR西日本のWEST EXPRESS 銀河