野茂英雄、イチロー、松井秀喜、佐々木主浩…海の向こうに渡り、我々のみならず本場の野球ファンの心をワシづかみにしてきた日本人メジャーリーガーの系譜に、また新たな名前が刻印されようとしている。新たにチャレンジを選んだ「サムライ」たちの本当の評価を余すことなく大公開!
交渉期限ギリギリまで粘り腰を見せた菅野の交渉に対し、すんなりレンジャーズへの移籍が確定したのが、日本ハムの有原航平(28)だった。
19年に15勝で最多勝タイトルを獲得した有原だが、田中将大(32)やダルビッシュ有(34)らのように、球界やチーム内で不動の大エースという実績があったわけではない。2年620万ドルの契約は、先の2人の「1億ドル超え」契約などと比較すると、だいぶ買い叩かれたようにも思えるが…。
「メジャー流の金銭感覚からすれば『お買い得』の金額ですが、有原本人のメジャー志向も手伝い、交渉はスムーズだったようです。レンジャーズGMは『若くて丈夫。安定して先発ローテを担ってくれるだろう』と、先発の軸というよりも、イニングイーターとしての期待を寄せています」(スポーツ紙デスク)
メジャーリーグ事情に精通するスポーツライターの友成那智氏によれば、レンジャーズではチームの新陳代謝が進められており、そのこともプラスに働いたようだ。
「昨季も活躍したエースのランス・リン(33)を若手投手2人とトレードするなど、ローテはほぼ総入れ替え。野手も含めて世代交代を図っています。そうした中で球団は、有原に関して先発の4~5番手で『10勝10敗』ぐらいの成績を残してくれればOKだと考えているでしょう。近年のレンジャーズは、元日本ハムのマーティン(34)や、元ヤクルトのバーネット(37)などNPB経験者を積極的に獲得し、彼らが大活躍してきた実績があります。その成功体験があるため、球団の環太平洋スカウトへの信頼が厚い。『日本のプロ野球で抑えてきた投手は通用する』というチーム内の認識が出来上がっていることも、早期契約を助けたようです」
昨季は8勝9敗で黒星先行となった有原。しかし、同程度の成績でも、とメジャー1年目を気負わず迎えられれば、いい結果が生まれるかもしれない。
そして「投高打低」の日本人評価が追い風になっているのは、今季メジャー移籍をもくろんだ3人の投手の中で唯一、ポスティングではなく海外FA権を行使しての挑戦となる澤村拓一(32)にしても同じことだった。
昨季は巨人で3軍降格の憂き目にあった澤村だが、シーズン途中に移籍したロッテで22試合登板13ホールド、防御率1.71の大復活という浮き沈みの激しいシーズンを過ごした。メジャー挑戦には、「勢い余ったか!?」と疑問を呈する声もあるが、友成氏は活躍に太鼓判を押す。
「澤村の特徴は、150キロを超えるハイファストボール(高めのまっすぐ)とスプリットのコンビネーション。速い球と落ちる球の組み合わせは、佐々木主浩や上原浩治のような成功例のパターンと完全に一致する。リリーフ適性は抜群で、成功の条件がそろっていると言っていいでしょう」
ポスティングとは違って期限は区切られていない。かつ、FA市場の大物リリーフ投手の結果待ちではあるが、それでも1月中には決まる見込みだという。
「私としては2年500万ドル程度が妥当かと思いますが、少なくとも日本球界での年俸据え置きの2年300万ドル程度なら、どの球団も手を伸ばしたがるはずです」(友成氏)
戦力としての評価は上々ということか。しかし、一方で不安視する声も上がっている。
「メジャーは、プライベートでの素行面も重視する球団が少なくない。澤村は飲酒トラブルなどを複数回起こしているだけに、それが契約の障害にならなければいいが…」(NPB関係者)
今後の交渉経緯を見守りたい。
最後は、ポスティングによる移籍を表明するも成立せず、残留することになった日本ハム・西川遥輝(28)の「敗因」を。こちらは指摘される「投高打低」の逆風をモロに受けた格好だ。
「実際には、安定した打率や出塁率の高さを評価する向きもありました。ただ、外野手としては肩が弱すぎて、レギュラーとして調査する球団はなかった。もともとは内野手ですから、『第4の外野手、第5の内野手』というスーパーユーティリティプレーヤーとしてなら生き残る道があったかもしれません。痛かったのは、打棒が期待されたメジャー初年度の秋山翔吾(32)が打率2割5分を下回り、大谷翔平(26)や筒香嘉智(29)らもバットが湿って、日本人野手全体の株が軒並み下がってしまったこと。いわば西川は『秋山の最大の被害者』。地合いが悪かった、としか言えません」(友成氏)
気を取り直して、日本一のリードオフマンを目指して頑張ってほしい。そして新たな挑戦を試みた3人の真の評価は、シーズンがスタートしてから問われることだろう。
※「週刊アサヒ芸能」1月21日号より