今秋ドラフト会議の注目選手が“消えた”。
花巻東の佐々木麟太郎内野手(3年)が10日、「プロ志望届」を提出せず、米国の大学へ留学する考えを明かした。父でもある佐々木洋監督は「野球が終わった後も生きていけるように」と、留学が人間形成の一環であるような語り口だったが、それだけではなかった。
学校関係者やアマチュア野球記者たちによれば、佐々木の進路について、エンゼルス・大谷翔平、ブルージェイズ・菊池雄星らにも相談を仰いでいた。また、佐々木の中学時代の指導者にあたる大谷の父・徹氏もその輪に加わっていたそうだ。
「阪神のスカウトが佐々木の視察に熱心でした。岡田彰布監督も『高校生を育てたい』と語っており、佐々木の1位入札を予想する声も多く聞かれました」(在阪記者)
ところが、である。リーグ優勝後に設けられたスカウト会議後に、
「高校生を上位指名するのは間違いないが、キャッチャーのようだ」
という情報が流れた。阪神スカウトが佐々木の気持ちを確認し、切り替えたのかもしれない。
大谷、菊池がどんなアドバイスを送ったかは不明だが、先輩たちの助言のなかには「もっと早く渡米したかった」という思いが含まれていたのではないだろうか。
「日本のプロ野球界を経由しないでメジャーリーグに挑戦するルートが新たに作られたと言っていいでしょう。NPBの二軍で経験を積むか、マイナーでやるか。1年でも早く米球界でやりたいと考えている球児は、今後このやり方をマネしてくると思います」(NPB関係者)
米スカウトは日本の高校野球の視察にも熱心だ。日米協定により、日本国内の指名候補はMLBのドラフト会議にはかけないことになっているが、佐々木の場合は現地留学生となるのでその対象外となる。
佐々木の夢は応援したいが、今オフ、阪神から高校球児の指名に関する見直し案が提議されるかもしれない。
(飯山満/スポーツライター)