新聞、雑誌、ラジオ、そして「朝まで生テレビ!」と、あらゆる媒体から提言を行ってきた田原総一朗氏。新型コロナによる未曾有の社会不安と政治不信が広がる現在を、田原氏の目はどう捉えているのか。天性のジャーナリストに天才テリーが聞く!
テリー お話を聞くと、本当に問題山積で、菅さんの責任は重大だと思うんですが、やっぱりコロナの対応ひとつ見ても頼りなくて。菅さんで大丈夫ですか。
田原 彼はまた2050年にCO2をゼロにすると言ったでしょ。そのために2030年をどうするか、今年の夏までに決めなきゃいけない。この責任者は今、二階(俊博)さんだよ。二階さんと会って、どうするか、やってる最中。
テリー うーん、そうかぁ。
田原 でも、こういうことにさ、なぜか新聞もテレビも興味示さないよね。
テリー たぶん、記者もわかんないんですよ。
田原 いや、新聞記者もテレビの記者も、サラリーマンになって、この国をどうするかに興味持ってないんだよ。
テリー あんまり想像力がないんですかね。
田原 違う。要するにサラリーマンって偉くなりたいんだよ。朝日新聞でも産経新聞でも偉くなるには、安全保障とか、エネルギーとか、あんまり考えないほうがいい。産経や読売は安倍さんを応援してりゃいいし、朝日や毎日は、安倍さんの悪口を言ってりゃよかった。
テリー そうか(苦笑)。
田原 だから、アサヒ芸能はしっかりしなきゃ。誰も偉くなろうと思ってないでしょ。アサヒ芸能で偉くなったって、しょうがないんだから。
テリー アハハ。オ〇パイばっかりやってますけどね。
田原 僕は、徳間康快(徳間書店の創業者)とは仲がよかったの。すごくおもしろい人で。だから、彼によく言ってたの。「朝日新聞にできないようなことをやれ」と。
テリー へぇ。じゃあ、田原さんにアサ芸の編集長になってもらわないと(笑)。昨年出た「90歳まで働く」を読ませていただくと、田原さんはテレビ東京に入った時から全然サラリーマン的じゃないですよね。
田原 それは、テレビ東京に入ったのがよかったの。まともな番組作っても誰も見てくれないから、他局がやらないような番組を作らないと。それがヤバイ番組、警察に捕まる番組。で、僕、2回捕まった。
テリー ですよね(笑)。
田原 でも、2回とも放送できたし、クビにもならなかった。
テリー いい環境ですよね。それなのに、なんで辞めちゃったんですか。
田原 「原子力船むつ」というのがあったでしょ。あの時に取材に行って、推進派も反対派も言ってることがムチャクチャだった。それで筑摩書房の「展望」という雑誌で連載を始めたの。そこで「原子力反対の市民運動はあちこちに起きる。その中で原子力推進の市民運動が起きた。なんとバックに大手広告代理店の電通がいるのがわかった」と書いちゃった。
テリー へぇ。
田原 そうしたら電通が怒って「こんなことを書いたヤツのいる会社にはスポンサーやらないぞ」と。当時のテレ東は三流だからね、電通からスポンサーをもらえなかったら潰れる。だから役員が「連載をやめるか、会社辞めるか、どっちか選べ」と。で、どっちも選ばなかったら、部長と局長が処分された。で、しかたなく辞めた。42歳の時。
テリー 42で会社を辞めるって勇気いりますよね。
田原 でも、もし60までいたら、それで終わってたと思う。40代で辞めたから何かやらなきゃいけなかったんだね。
テリー 辞める不安はなかったんですか。
田原 会社で偉くなったってしょうがないからね。そんなものは定年になったら終わりだから。
テリー 定年って、今は一般的には60歳ですよね。
田原 そう。だけど、iPS細胞でノーベル賞を受賞した京大の山中(伸弥)さんが「田原さん、あと10年ぐらいたつと、あらゆる病気が治っちゃう」と。人間、死ねなくなる。平均寿命が120歳になると。
テリー 僕なんかあと50年生きなきゃいけない。
田原 山中さんはそう言ってる。そうするとね、60で定年したあと60年間、どうするんだと。だから、日本人の今までの人生設計は、20年学んで、40年働いて、15年が年金生活。これからは、これも考え直さなきゃいけない。
テリー どうすればいんですか。アサ芸にも50代以上の読者が多いんですけど。
田原 でも僕は、生きる道がこんなにあって、チャンスが多い時代はないと思う。野村総研がオックスフォード大学の学者と共同研究をして、「AI時代になると10年20年後には日本人の仕事の49%がなくなる」と2015年に発表した。それで、みんな不安になった。
テリー そうですよね。
田原 でも、僕は不安じゃないと思う。18世紀半ばから19世紀にかけてイギリスで産業革命が起きた時も「人間の仕事は全部、機械がやるようになる」と言われて、労働者による機械ぶち壊し運動が起きた。「俺たちの仕事を機械に全部取られてたまるか」と。ところが産業革命の結果、仕事はどんどん増えた。だから僕は、AI時代は仕事は増えると思う。ただ、仕事は自分で考えなきゃいけない。
テリー 新しい仕事を。
田原 そう。考えれば、いくらでもある。だから、今年はそういうことを考えなきゃいけない。
テリー コロナで社会もガラッと変わりましたしね。
田原 今までの日本的経営でダメなのは、年功序列、終身雇用でしょ。で、大企業の場合は30過ぎると、主任、係長、課長、部長、役員、うまくいけば社長って偉くなる。だから、30を過ぎると、それが目標になるの。でも、そんなの60で終わりだから、出世なんて考えないで、「さぁ、自分はどう生きるんだ」と。これからは、それを考えなきゃいけない時代だよ。
テリー まぁ、会社に頼っててもね。
田原 だから大チャンスなんだよ。今までみたいな日本的経営はダメになって、会社は厳しくなる、非正規社員がどんどん増える。だから大事なのは「何をやりたいか」。だからね、僕はテリーさんがどこまで頑張るかっていうのも、日本の1つの希望になると思う。
テリー ありがとうございます。僕は団塊の世代なんで、そういう思いはあります。たぶん「テリー伊藤が頑張ってるなら、俺も頑張ろう」という目で見てくれてる人もいると思うので。
田原 うん、いっぱいいると思うよ。テリーさんみたいな若い人が頑張らないと。期待してます。
テリー ありがたいです。若い人って言われたの、久しぶりですよ(笑)。ところで田原さん、すごくお元気そうですけど、体調は全然問題ないんですか。
田原 好きなことしかやってないからね。
テリー あ、そうか。それが健康法でしたっけ。
田原 そう。ずっと勝手気ままにやってるんだよ(笑)。
【テリーからひと言】86歳にして、まだまだお元気。本当に刺激になるな。増刊号でも特別号でも、ぜひアサ芸の編集長をやってほしいよ。きっと刺激的なものを作ってくれるんじゃないかな。