福岡ソフトバンクホークスは「再生工場」として、米フリーエージェント市場でも認知されることになるかもしれない。
昨シーズンに6勝を挙げたマット・ムーア投手に代わる先発候補として、前カブスの大型右腕コリン・レイ投手の獲得が発表されたのは、1月15日だった。「メジャー通算35試合に登板」という経歴では米球宴の出場経験もあるムーアには敵わないが、ソフトバンクで“大化け”するかもしれない。
「そもそも、ムーアは日本でリハビリ登板をしていたようなもの。2014年にトミー・ジョン手術を受け、復帰後の19年シーズンに打球が右膝にあたる悲劇に見舞われました。ソフトバンクで『故障個所は治った』とアピールすることに成功し、メジャーリーグに帰還を果たしました」(スポーツ紙記者)
新加入のレイもムーアに倣おうとしているようだ。レイの経歴は、ちょっとユニークだ。16年シーズン後半、右肘にメスを入れているのだが、その故障劇を記憶している米野球ファンも多いそうだ。
「同年7月、パドレスから地区優勝を狙うマーリンズにトレードされ、その2日後にはいきなり先発マウンドを任されました」(前出・米国人ライター)
ところが、である。4回途中に突然、右肘の違和感を訴え、そのまま降板。トミー・ジョン手術が必要なほどだったが、これにマーリンズが激怒。トレード相手のパドレスに「彼の故障を隠していただろ」と猛抗議したという。
「トレード成立前、レイはマーリンズによるメディカル検査も受けています。マーリンズ側の難クセと捉えられても仕方ない状況。でも、パドレスはこの先、他球団とのトレード交渉で信頼を失うことを恐れ、レイの“返却”に応じたんです。同トレードで得た選手をマーリンズに帰還させました」(前出・米国人ライター)
トレード成立後のクレームによって旧チームに帰還するのは異例中の異例だという。
その後、レイは17年シーズンを全休。18年以降はマイナーで投げ、昨季、ようやくカブスでメジャー復帰を果たした。通算出場試合数が少ないのは、そのためだ。
「レイはカブスで先発候補の一人として計算されていました。変化球が多彩で、しっかりと責任イニングを投げきることのできる好投手です」(前出・米国人ライター)
レイは70万ドル(約7300万円)でカブスと21年の契約を結んだが、ダルビッシュの放出に踏み切るほどチームの経営は深刻だ。契約締結後に「ソフトバンクが110万ドル出す」と知り、レイが日本行きを希望し、カブスもそれを承認したというわけだ。
「レイはメジャー復帰した昨季も『トレードで返品された投手』と紹介されていました。本人はイヤそうでした。カブスが高年俸を出してくれないこともあり、日本で完全復活をアピールし、改めて米球界で高年俸を勝ち取ろうとしているのだと思います」(球界関係者)
米国内で希望が叶わないのなら、日本のソフトバンクへ…。こんな見解が定着しつつあるようだ。たとえ“腰掛け”でも好成績をおさめられそうな選手を獲得する。今季のソフトバンクは、三軍制による生え抜きの育成だけでなく「再生工場」としても注目を集めそうだ。
(スポーツライター・飯山満)