有原航平投手がテキサスレンジャーズと契約合意したのは、12月25日(現地時間)だった。2年600万ドル以上(6億円強)、先発ローテーション候補という好条件だが、同じく同時期に米球界挑戦を表明した菅野智之投手のほうは交渉が難航したまま。交渉が長期化している理由は、菅野の巨人に対する未練だけではなかった。
「『先に動いたら、負け』みたいな拮抗状態に陥りました。ヤンキースからフリーエージェントとなった田中将大、今年の米FA市場ナンバー1と位置づけられるトレバー・バウアー、そして、菅野の3人の去就が注目されています。3人のうち誰か1人が決まれば、残った2人の価値が上がるような雰囲気です」(米国人ライター)
たしかに、田中、バウアー、菅野に興味を示している球団は重複している。ヤンキース、メッツ、パドレス、レッドソックス、エンゼルスなど補強資金が潤沢な球団ばかりだ。仮に田中のヤンキース残留が決定すれば、菅野の交渉条件はさらに上がる。バウアーは2020年、1750万ドル(約19億2500万円)の年俸が提示されていた。補強資金が潤沢でも大幅な昇給提示は厳しい。そうなると、年俸600万ドルから800万ドルの間で条件提示されている菅野に人気が集まる。
いわば、菅野は“根比べ”を強いられている状況だが、こんな情報も聞かれた。
「菅野の代理人は、有原と同じワッサーマングループのジェエル・ウルフ氏。ウルフ氏がインターネット取材で明かしている限りですが、菅野を指して『頭の良い人。質問が的確』と褒めていました」(前出・米国人ライター)
「質問が的確」とは、相手球団がウルフ氏に起用法などについて「先発の3、4番に位置づけている」と伝えれば、「3番手と4番手の違いはどこにあるのか」「エースは誰で、どんな判断基準で先発5人を決めているのか」など、自身が入団した後、どんな努力をすれば良いのかまで探ろうとしているという。この質問攻めには別の見方もできるようで、
「メジャーとの交渉で、慎重すぎる姿勢が遅延にもつながっているかもしれません。もちろん、巨人への愛着もあるはず。年内決着を目指していると聞いていましたが…」
日本の球界関係者はこう話す。米球界に飛び込み、ゼロからのスタートを決めていた有原とは対照的だ。菅野に許された交渉期限は1月8日午前7時まで(日本時間)。質問が的確なのもけっこうだが、そろそろ時間切れの心配もしなければならなくなってきた。
(スポーツライター・飯山満)