「ウインウインの関係」は崩れず…マスク氏「政権要職を辞任」でも続くトランプ大統領との蜜月

 トランプ米大統領は4月3日、大統領専用機内で記者団に対し、「政府効率化省」を率いる実業家のイーロン・マスク氏が近々、政権要職から退くとの見通しを示した。

 こうした報道を受けて「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)のコメンテイター・玉川徹氏は番組で、「(マスク氏は)ものすごい金額の政府予算を切っていた。あまり過度にやりすぎると、悪影響のほうが絶対に大きくなる。むしろ、いなくなったほうがトランプ政権にもアメリカの弱者の人たちにもよかったのでは」と寸評した。

 しかし、ある政治アナリストは、下記のように「マスク氏辞任の裏はそう簡単ではない」と分析する。

「トランプ氏が今回『マスク切り』に踏み切ったのは、ウィスコンシン州最高裁判事選挙の結果が影響していると見られています。トランプ氏が推し、マスク氏が選対指揮した候補が民主党系候補に10ポイントの大差で敗れたのです」

 アメリカ・ウィスコンシン州は大統領選挙でも激戦州の1つ。そこで4月1日に行われた州最高裁判事の選挙で、リベラル派のスーザン・クロフォード判事が、トランプ氏とマスク氏が担いだブラッド・シメル判事に勝利したのだ。外信部記者が明かす。

「この判事選挙でマスク氏は、自身と関連団体あわせて約2100万ドル(約31億円)を投じるという金権選挙を展開しました。一方、民主党はオバマ元大統領やジョージ・ソロス氏らが動いた。結果はトランプ・マスク陣営の惨敗。敗因は、なによりマスク氏への反発という見方が強いのです」

 アメリカ政治情勢に詳しいシンクタンク関係者もこう言う。

「マスク氏をめぐっては、政権内でも『やり過ぎ』に不満が出ていました。また、世論でもマスク氏批判が高まっていたため、トランプ氏も頭を抱えていたのです。そんな中で行われた選挙が大敗してしまった。関税政策を巡っての対立も伝えられていますが、もともとトランプ氏もマスク氏を政権から外したほうがプラスと考えていたのでしょう。ただ、表向きは縁を切る形でも、マスク氏の資金力には抗えない。マスク氏も世界最強の権力者の影の側近という立場は捨てがたい。ウインウインの関係の2人は、裏ではガッチリと手を組み続けると見られています」

 蜜月だったトランプ氏とマスク氏の関係がどのように変化するのか、あるいはいささかも変わらないのか、今後も2人の動向から目が離せない。

(田村 建光)

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