にしても、あらゆる手続きが面倒にも思えるが、
「いやいや、こうした転売情報は、それを通知してくれるサロンやインフルエンサーがいるので、そのとおりにやればいいだけ。考える必要がないのです。彼らは彼らで、これら情報でアフィリエイトの収入を得ているので、転売ヤーとはウィンウィンの関係ですね」(山野氏)
一方、ライトでなく“ガチ”の世界ももちろんある。
各種儲けの現場に潜入、そのカラクリを取材した村田らむ氏が、ガチゆえのすさまじい現場についてこう語る。
「例えば、洋服のブランドの関係者向け販売会です。販売会の場が開くと、会場には転売ヤーが殺到。大量に買い漁って去っていくのです。そこに入るためのチケットですか? もちろんネットに出品されているものを買うのです。それからゴミ屋敷や特殊清掃の現場。そこから出たゴミは、捨てるにも手間とコストがかかるので、売れるものは売りますが、中には掘り出し物もある。それを見てしまったがために、中古店でそれらしくない逸品が売られていると、『ああ、誰か亡くなったな』なんて思うようになってしまいました」
かくも様々な転売の世界だが、ITジャーナリストの井上トシユキ氏によれば、一般の人が参入、やがて転売ヤーが出現する始まりは2000年代初頭、ヤフオクのサービス開始だったと説明する。
「ヤフオクが始まった当初は、地方のおもちゃ屋からレゴを大量に入手、売ったら大儲けしたと語るブログが話題になるということがありました。その間、ガンプラが対象になったり、キムタクのドラマに触発されて、トルコ石に火がつくということもありました。そしてツイッターが登場すると、人が儲かった話をよく目にするようになり、『転売=儲かる』という意識が定着しました」
ただ、最近はメーカーなども対策に乗り出している。商品が品薄になって、転売ヤーが跋扈し始めるタイミングに、生産を増やしてハシゴを外してしまうのだ。それで過剰在庫を抱えて爆死した転売ヤーもあまたいるとか。
国税職員のように、道を踏み外す過ちだけは犯さぬように─。
*週刊アサヒ芸能6月6日号掲載