とまれ、そのコッズ部隊の上位幹部が殺害されたことで、イランはその報復として4月13日夜からミサイル・ドローン攻撃を仕掛けた。それへの再反撃となると、泥沼、さらに不測の事態へ発展するという恐れも出てくるが‥‥。
「(報復を)抑えるような報道をアメリカは出していますが、イスラエルはそんなやわではない。何らかの行動に出るでしょう。ただ、双方が全面戦争は望んでおらず、しばらくはジャブの打ち合いになる。実際、19日にイスラエルがイランの一部施設へ攻撃をしたという報道が流れていますが、イランも今の時点では沈静化を図っている。つまり、私はこれも〝ジャブ〟の範疇だと認識しています」(軍事ジャーナリスト・黒井文太郎氏)
今のところ、両国の思惑などからその可能性は低いようだ。国際ジャーナリスト・山田敏弘氏も全面的な対決は現実的ではない、と説明する。
「13日の攻撃は、言ってみればイランのメンツとしての反撃。本気で攻撃する気なら保有するミサイルなどの量から考えても数日間にわたる攻撃が可能でしょう。それが早々に、いわば打ち方やめを宣言している。また、実際問題として今回のイランからのミサイル迎撃にアメリカやイギリスも協力しているわけで、攻撃が拡大すればこれらの国も敵に回した戦いになってしまう。そもそも、イランはこれまでも自国は直接戦わず、自分たちが支援する武装勢力や過激派、ヒズボラ、ハマスなどにイスラエルを攻撃させていた。それが今回、イランが直接攻撃したことで話題となっているが、これ以上の戦闘拡大は望まないでしょう」
となれば、全面戦争、ましてや世界大戦の危機は避けられそうだが、山田氏が続ける。
「全面的な戦闘は避けたいイランですが、それでもレッドラインはあります。例えば、イスラエルの報復でイラン国民に被害が出れば見過ごすことはできないでしょう。そうなれば、イランにはイスラエルに対して攻撃をする動機ができる。これが考えられるエスカレートするパターンです」
時に予期せぬ事態に転がっていく、不測の事態を引き起こすのが戦争というものだ。
「あえて、最悪のシナリオを言えば、まずは両国の戦闘により原油価格の高騰。これは世界中に大きな影響を与えます。また、イランがホルムズ海峡を封鎖し、タンカーを攻撃するようなことがあれば、さらに状況は最悪になる。いまひとつの懸念は世界がより分断化すること。国連が実質機能しない中、イスラエルには欧米、イランにはロシア・中国・北朝鮮といった具合に世界規模の分断が激しくなる。より世界は不安定になり、日本は難しいかじ取りを迫られるでしょう」(山田氏)
サラエボ事件、ポーランド侵攻‥‥、世界を火の海に巻き込む中東情勢を全世界が固唾を呑んで見守っている。
*週刊アサヒ芸能5月2・9日号掲載