イスラエル地上戦突入で、金総書記を震え上がらせた「バンカーバスター」使用の懸念

 ハマスとの戦争を、第1段階の空襲、第2段階の地上軍投入とハマス除去、第3段階の新たな安全保障(代替政権)構築と表明していたイスラエルのネタニヤフ首相が、28日夜の記者会見で、前日27日にガザ地区で始まった地上軍事作戦でいよいよ戦争が第2段階に突入した、と明らかにした。

 29日の現地メディア「タイムズ・オブ・イスラエル」も、イスラエル軍が同日、ガザ地区の地下に張り巡らされた通称「メトロ」と呼ばれる巨大トンネルから出てくるハマス武装兵士と激しい銃撃戦を展開したと伝えている。中東事情に詳しい軍事アナリストが話す。

「ハマスはイスラエルの監視を逃れ、物資や武器を密輸するため、全長480キロにも及ぶ網の目のように張り巡らされた地下トンネルを長年かけて作り、それを使用してきました。この要塞都市ともいえるトンネルは、通路の周囲がコンクリートの厚い壁で覆われ、最深部は地下40メートルにも達するのだとか。内部には発電機が備えられ、食料等の備蓄もあるため最低限の生活は可能で、司令部や作戦本部ほか、戦闘部隊の待機部屋や武器弾薬の保管庫としても使われているようです」

 専門家によれば、ハマスの本部はガザ地区北部にあることから、おそらくイスラエル軍はガザ地区を南北に分断、そのうえで北部を中心に地上戦を展開すると予測されるが、地下トンネルへ攻め込むのがイスラエル軍の「ヤハロム」という特殊部隊だ。

「ヤハロムはヘブライ語でダイヤモンドを意味し、工兵部隊に所属。地下トンネルへの対応を専門とする精鋭部隊だといいます。彼らはイスラエルの訓練センターに作られた『リトルガザ』と呼ばれる人工都市の地下でトンネル戦を想定して日々訓練を受けてきた。トンネル内での戦闘やトンネル内に隠された武器などの破壊が、彼らに課された任務です」(前出・軍事アナリスト)

 そして、イスラエル軍がこのコンクリートで固められた地下要塞を突き破るために用意したのが、このほどアメリカから供与された「バンカーバスター」と呼ばれる地中貫通爆弾だ。

「米軍が所有する最新のバンカーバスターはGBU57と呼ばれるもので、長さ6.2m、直径0.8m、重さは12~13トン。内部には2.7トンの高性能爆薬が詰まっており、地下60mまで貫通できるまさにモンスター爆弾です。米空軍がこれをB2ステルス爆撃機から投下する動画を公開したところ、掩体壕の発達した北朝鮮の金正恩総書記が青くなったという逸話まであるほど。今回、イスラエルに提供されたものがこの最新型のGBU57かどうかわかりませんが、イスラエルとしては地上作戦を短期で終わらせたいでしょうから、人質の安全確保に注意しながらもバンカーバスターを積極的に使用して、ハマスが隠れられないまで地下トンネルを潰して反撃を防ごうとするはずです」(同)

 はたして「モンスター爆弾」は使われるのか。怒りに飲まれたイスラエルの攻撃が懸念される。

(灯倫太郎)

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