イスラエルとハマスの戦闘にあのワグネルが参戦!?「反イスラエル組織を軍事支援する」

 10月7日、パレスチナのイスラム系武装組織ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃で幕を開けた大規模な戦闘。直後から、レバノン南部を拠点とするシーア派の武装組織ヒズボラがハマスとの連帯を表明したが、同組織はイスラエルの軍事施設などに集中砲撃を行い、多くの死傷者が出ている。

 そんな中、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)電子版が11月2日、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」がヒズボラに対し、敵のミサイルなどを打ち落とす防空システム支援を検討中であると報じ、内外に衝撃を走らせている。軍事アナリストが説明する。

「ワグネルが提供を検討しているとされる『パーンツィリ-S1』はロシアが開発した近距離対空防御システム車両で、パーンツィリには『鎧』『甲冑』の意味があります。対空機関砲2基のほか、左右に地対空ミサイル各6発、計12発を搭載し、戦闘機やミサイルの破壊だけではなく、地上のる装甲車両撃破にも対応しうる兵器です。現存する低中高度防空体系の中でも最も性能が優れているとされることから、ロシアやシリアだけでなく、アルジェリア、イラク、ヨルダンなどでも使用さていると言われています」

 米高官の談話を伝えたWSJによれば、現時点でワグネルがヒズボラにパーンツィリを送ったのかどうかの確認は取れないものの、取引が行われた場合、イスラエルと米国にとって大きな脅威となることは必至で、そのため両者の接触を注意深く監視しているという。

「ワグネルは内戦が続くシリアに対し、これまでも多くの部隊を派遣し、アサド政権に協力してきました。一方、イランの影響下にあるヒズボラも、シリアに多くの戦闘員を送り込み、アサド政権を支援しています。つまり、ワグネルとヒズボラはアサド政権を通じて以前から深い繋がりがあったと見られていて、近いうちにワグネルがヒズボラに武器弾薬を提供することは十分に考えられるのです。それどころか、報酬によってはワグネルの部隊がイスラエル戦に加担する可能性も指摘されていますね」(前出・アナリスト)

 周知のようにワグネルは、創設者のプリゴジン氏の反乱騒動や死亡事故以降、離脱者が急増するなど、その動向に関心が集まっていた。

「今回のイスラエル戦がワグネルにとって新たな『仕事先』になるという見方は少なくありません。ハマスやヒズボラにとっても、仕事のできる傭兵は喉から手が出るほどほしいはずです。つまり、両者の利害が一致しているのです。今後はワグネルによる全面的なバックアップの可能性もあり、そうなればイスラエルと米国にとっては、大きな脅威になることは間違いないでしょう」

 終わりの見えない戦闘にどんな影響を与えるのか。ワグネルの動向を世界が注視している。

(灯倫太郎)

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