証券業界の合言葉、「砂漠へいこう」がいつなるか。日経平均の過去最高3万8915円87銭をいつ更新するかという意味だ。2月16日の金曜日にはあと50円ほどに迫り、週明けの19日はわずかに16円下げでおあずけとなった。
ただ一方、15日に政府が発表した23年10~12月の実質GDPはマイナス0.4%の2期連続のマイナス成長で、ドイツに抜かれて4位に陥落した。この「実感なき株高」に、個人投資家からも「儲かった」という声はあまり聞かれない。
「日経平均が値上がりしているのも、ユニクロのファーストリテイリング、トヨタ、ファナック、東京エレクトロン、KDDI、ソフトバンクといった、株価の高い値がさ株と半導体・IT関連銘柄が上げて全体の底上げをしているだけで、将来の成長が見込めて個人が手出ししやすいグロース株はむしろ冴えない動きをしているからです。日経平均の寄与度ランキングを見ても、半導体株ばかりで、半導体株指数を見ているかのようです」(経済ジャーナリスト)
なのでネットやSNSでも、「株価が1000円も上げているのに、自分が勝てないのはなぜ」、「(自分は)普通にマイナスなんですけど」といった声が上がっている。
象徴的なのがあおぞら銀行株だった。2月1日の決算発表では、今期240億円の黒字予想だったものが、アメリカ不動産向融資の絶不調を受け、一転して280億円の赤字に修正。5.6%という高い配当率で人気の銘柄だったが、配当がゼロになって、株価は約3割も下げた。ほかにも住友ファーマの20%超の下げなど、日経平均構成225銘柄のうち、40銘柄が年初来で株価を下げているといった状況だ。これでは多くの個人投資家からウハウハといった声が聞こえてこないのも当然だ。
「2月6日に厚労省が発表した去年の実質賃金は、前年比でマイナス2.5%。物価高に賃金の上昇が追いついていないからで、インフレなのに不景気というスタグフレーション状態。海外のアームやエヌビディアの株高につられて半導体銘柄を中心に日経平均が上がっているために株高と騒いでいるだけで、日本が実は貧乏国という実態は変わりません」(同)
しかも値段が上がっている株を多く買っているのは外国人投資家ばかりなのだから、ますます国内経済の「空洞化」が進んでいるという喜ばしくない事態が進行しているのだ。