ロシアのプーチン大統領の汚職を追及するなど、反体制派のアレクセイ・ナワリヌイ氏の死亡が伝えられたのが、2月16日。西シベリアの最北、北極圏というあまりにも孤立した場所故「北極の狼」との異名を持つ刑務所内部での死だった。
ロシアではプリコジン氏の死に次いで、プーチン大統領の目障りな存在が次々と亡くなっているが、やはりナワリヌイ氏の死も謎の多いものとなっている。
「死因について公式には発表されていませんが、訃報を受けて駆けつけたナワリヌイ氏の母親などに告げられた死因は『突然死亡症候群』というもので、突然に心停止などに陥るというものでした。またその母親が刑務所近くの病院に行くもそこには遺体はなく、シベリア北部の病院にあることが分かりました。通常、獄中死はすぐに遺体を解剖するはずのところが、なぜか臨床病院にあって、遺体には謎の痣があったとされていて、不審な点ばかりです」(全国紙記者)
訃報を受けウクライナのゼレンスキー大統領は、「プーチンに殺害されたのは明白だ」と述べ、アメリカのバイデン大統領も「間違いなくプーチンの責任」と憤る。またEUやNATOもトップがプーチン大統領に批判的なコメントを出し、世界に波紋を広げている。
極めて過酷な環境下にあって、以前から健康問題が懸念されていたが、「突然死」という最期には、当然、「殺害」の疑念が持たれる。実際、ロシアでは政治的な暗殺がこれまでも相次いできた。そしてその方法には、「毒殺」がよく用いられる。
「昨年11月には情報局長の妻が毒を盛られて重金属中毒になっていたことが判明したばかりです。また過去では、06年にやはり政府に批判的な女性記者が射殺されるという事件がありましたが、04年には航空機内で出されたお茶に毒が盛られていたということがありました。同じ06年には元スパイが亡命先のロンドンで死亡していますが、ホテルで出されたお茶に毒を盛られたことによるものでした」(同)
このように家族を狙ったり、女性記者が射殺されたのはプーチン大統領の誕生日だったりと、同じ命を狙うにしても見せしめ的な威嚇的意図が透けて見える。だがロシアで反政府活動を行うなら、日常的なものにも気をつけないといけないようだ。
「20年にはナワリヌイ氏を尾行していたスパイが上司への報告と騙されて、ほかならぬナワリヌイ氏が電話で殺害方法を聞き出すことに成功したことがありました。この時スパイは、インナーに神経剤を仕込んだと明かしたといいます。そのインナーを履いて汗をかくと、体内に神経剤が吸収されるというわけです。18年にはやはり亡命先のイギリスで2重スパイの毒殺未遂事件が起きていますが、この時も同じ神経剤が用いられました。液体状のものが玄関のドアノブに吹き付けられていて、捜査に当たった警察官の家族まで巻き込まれるという被害も出ました」(同)
ナワリヌイ氏の毒殺未遂でプーチン大統領は、事件に関与した工作員について、「毒殺したいなら最後までやっていただろう」と語っている。大統領からこんな言葉が出てくるというのだから、なんとも恐ろしい。