物価の上昇が続く一方、賃金はずっと横ばいのままの日本。真綿で首を締めるように少しずつ生活が苦しくなる中、高収入を得られる海外で働く人が近年増えている。
これまではエリート層や特殊技能を持つ一部の人に限られていたが、「今後は一般労働者も仕事を求めて海外に飛び出す時代になるでしょう」と指摘するのは経済誌編集者。ただし、それはポジティブな意味合いなどではないという。
「要は出稼ぎです。日本にはアジアや南米、アフリカの人が多数出稼ぎに来ていましたが、今は他の先進国ほど稼げません。実際、出稼ぎの外国人労働者が日本の平均年収以上の収入を得られる国も増えています。国内でも地方から都市部への出稼ぎは昔からありましたが、今後はそれが海外になるというわけです」
例えば、中東を代表する大都市ドバイ(UAE)は外国人労働者で成り立っている街として有名だが、一般の出稼ぎ建設作業員の平均月収は1万1000ディルハム(約40万円)前後と言われている。年収1000万円以上が当たり前の同国ではかなり少ないとはいえ、それでも日本の平均年収を上回っている。
「自国民があまりやりたがらない仕事になるため、当然ながら肉体系のハードな仕事が多くなります。ただし、ホワイトカラーの仕事のように高度な語学力は要求されませんし、健康な身体と多少のコミュ力さえあればなんとかなります。それにどの国でも会社側が労働者向けの宿舎を用意しており、食事を提供するところも多い。まあ、快適な職場環境かと言われたらちょっと微妙ですけど(苦笑)」
また、海外出稼ぎのメリットはこれだけではない。
「為替の状況によっては国ごとの賃金格差以上に大きな収入を手にできます。現在は1ドル130円を突破し、20年ぶりの超円安水準です。そのため、外貨ベースでも特にドル建てで賃金が支払われる国や企業であれば、より高い報酬を得られます」
今後は日本人の間でも海外出稼ぎが現実的な選択肢のひとつになっていくかもしれない。
(トシタカマサ)