日中激突「沖縄海上戦」驚愕シミュレーション」(1)20年で拡大した日中の軍事格差

 日本に軍靴の足音が迫っている。昨年1年だけで北朝鮮は99発のミサイルを乱射、大規模な軍拡を行う中国は南シナ海、そして東シナ海へと覇権を広げている‥‥。今や日本は「新しい戦前」に直面しているのだ。日本の〝火薬庫〟南西諸島に襲いかかるミサイル危機を緊急シミュレーションする。

 口角泡を飛ばし危機を訴えるのは軍事ジャーナリストの井上和彦氏だ。

「台湾情勢は過去にないほど緊迫しています。ほんの1年前、国際社会の批判を浴びていたのは中国でした。人権問題などにより北京冬季五輪には米国をはじめ欧米各国は政府関係者を出席させない『外交ボイコット』を行いました。しかし、そのわずか2週間後、ロシアによるウクライナ侵攻が始まったことで、ロシアが代わって批判を一手に引き受けることになったのです。中国は、ゼロコロナ政策に失敗しながらも、水際対策を強化した日本に対しビザの発給を停止するなどやりたい放題です。もはや中国は火事場泥棒よろしく、台湾に攻撃を仕掛けてくる可能性があるのです」

 昨年8月、ペロシ米下院議長が台湾を電撃訪問。蔡英文総統と会談し、「米国は台湾の民主主義を守る」と宣言した。これに烈火のごとく怒った中国は台湾周辺で軍事演習を開始。11発のミサイルを発射。うち5発が日本の排他的経済水域(EEZ)に着水したことは記憶に新しい。

「台湾有事の際、当然台湾の援軍となる米軍基地のある沖縄も攻撃対象となります。とはいえ、ウクライナ戦争で、ロシアはウクライナの背後にいるNATO(北大西洋条約機構)に直接手を出すことはなかった。とすると、中国もよほどの覚悟がなければそこまで踏み込むことはないでしょう。しかし、反対に米軍が積極的に介入する可能性があるのです。というのも、もしも中国に台湾を取られてしまうと米国はグアム、ハワイという〝点〟だけの防衛で、西海岸の真正面で中国と対峙することになってしまう。つまり、米国は自国のためにも台湾や尖閣を守る必要があるわけです。むろん、日本にとっても他人事では済まされません。台湾は日本にとって大事なシーレーン(海上交通)となるだけに台湾有事は即日本有事というべき緊急事態なのです」(井上氏)

 こうした台湾を巡る軍事的緊張が高まる中、ネット書店アマゾンで売り切れとなるほど入手困難になっている書籍が「現代戦略論 大国間競争時代の安全保障」(並木書房)だ。中国による尖閣・台湾有事に備えた具体的な日本の防衛戦略を説いた研究書である。著者であり防衛研究所防衛政策研究室長・高橋杉雄氏が中国の脅威についてこう解説する。

「大規模な軍拡を行った中国と日本の軍事格差は広がる一方です。東アジア地域における防衛費の割合は、01年の中国45%に対して日本36%。ところがそれから20年後の21年には、中国65%、日本15%となっている。また、2000発程度と見られる中国のミサイルの多くは、南西諸島から本土まで日本を射程に収めています」

 軍事力の差は歴然。しかも、格差は広がる一方だというのだ。

 まさに開戦前夜ともいうべき台湾有事で、日本はどこまで巻き添えを食うことになるのだろうか。

「戦線をどこまで広げるかは中国側が決めることです。もちろん台湾だけを攻撃する可能性はありますが、戦争では奇襲を仕掛ける先制攻撃の瞬間が有利になる。つまり、中国が米軍を撃破するために台湾以外にも南西諸島、グアムを含め軍事的に使用しうる飛行場を先制攻撃してくる可能性があります。これには米軍基地だけでなく軍事的に使用できる飛行場なども含まれてきます」(高橋氏)

 沖縄など、南西諸島の島々に中国のミサイルが雨あられと降り注ぐ可能性を指摘するのだ。

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