防衛省は12日、鹿児島県西之表市・馬毛島で、自衛隊基地の建設に着工した。米空母艦載機の離着陸訓練に使用される2本の滑走路などが新設されるという。
政治部デスクが解説する。
「この他、3月末までに石垣島駐屯地を開設させ、ミサイル部隊を配備する方針です。これで、沖縄本島、奄美大島、宮古島に続き4拠点のミサイル基地で中国に対抗することになります。また、米軍が沖縄に駐留する海兵隊を即応部隊に改編することに呼応して、沖縄の第15旅団(那覇市)を師団に格上げしました。人員や弾薬の増強を図り、日米共同で南西諸島の有事に対応する構えです」
現在、那覇市に司令部を置く第15旅団は、歩兵部隊となる普通科連隊のほか、防空を担う高射特科連隊など約2200人の陣容だが、これに1個連隊を加えた3000人程度に拡充することになるという。
「こうした南西諸島に配備された地対艦ミサイルだけでも数百キロの射程があります。これがさらに長射程のものになれば、相手は近づきづらくなる。もちろん抑止力にはなるでしょうが、実際の戦闘になるとあまりに規模が小さすぎる。人員で言えば一ケタ足りない。中国が人海戦術で押し寄せてくれば、ひとたまりもありません」(軍事ジャーナリスト・井上和彦氏)
駐屯地やミサイル部隊は我が国土を守るという意思表示にはなっても、いざ実戦となった際には火力で優位に立つ中国の前ではあまりに物足りないというのだ。
しかし、このウイークポイントに対し、防衛研究所防衛政策研究室長の高橋杉雄氏がある秘策を明かす。
「ミサイルを多く持つ中国は、飛行場や港湾を攻撃するかもしれません。しかし、中国の目的は基地などを破壊することそのものではありません。台湾であれ、尖閣であれ、基地を破壊した後に部隊を上陸させて占領することが目的になります。つまり、占領さえ防げれば中国は勝てないわけです。そのために、日本は地上で戦うのではなく、射程の長いミサイルを多数持ち、海の上で阻止することが必要なのです。しかも、陸海空の自衛隊が別々に戦うのではなく、一体となり戦う。これが統合海洋縦深戦略になります」
昨年12月、政府が閣議決定した「安全保障関連3文書」では「国家防衛戦略」として相手のミサイル基地などを叩く「反撃能力」の保持が明記された。中国のミサイル攻撃を、海上で迎え撃つために有効な兵器となるのが陸上自衛隊の所持する「12式地対艦ミサイル」だ。しかし、その改良型が完成するまでは、米軍製巡航ミサイル「トマホーク」を購入し、敵の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ防衛」とする構えだ。
「今回、米国から提供を受けることになる巡航ミサイル『トマホーク』は本来買いたいからといって、もらえる兵器ではありません。その証拠に米国は提供を求めたウクライナには渡していません。しかし、東アジアの情勢を危機と判断し、日本に売ることにしたのです。日本は『スタンド・オフ防衛』としてまずこの『トマホーク』、次に『12式地対艦ミサイル』『高速滑空弾』などを配備することになると思います」(高橋氏)
1月11日、日米両政府は2プラス2共同文書で中国の「最大の戦略的挑戦」に対し、「反撃能力」の協力を深化させる方針を打ち出している。