「高齢者にも使いやすく?」接触確認アプリ「COCOA」継続に懸念の声

 厚生労働省が9月8日、新型コロナウイルス感染症の接触確認アプリ「COCOA」を高齢者や障がいのある人にも使いやすいようにする、との方針を発表。来年3月までに、「見出しやラベルを付ける」「音声解説を提供する」などの性能を加え、利用者の拡大を目指すという。

 とはいえ、昨年6月に運用がスタートしたCOCOAは、初日に不具合が発生し運用停止に。その後もダウンロードしたものの起動しない、さらには使用後すぐに初期設定に戻ってしまった、といったトラブルが続出。「無用の長物」と揶揄されたことは記憶に新しい。

「COCOAは利用者同士が一定の距離内に近づくと、お互いのデータを記録。新型コロナウイルスの陽性者がその情報をアプリに登録すると、過去14日間に半径1m以内で15分以上接触していた人に通知されるというものです。ただ、感染者が陽性の申告を希望する場合は、メールなどで国の感染者情報共有システム『HER‐SYS(ハーシス)』から処理番号を受け取り、感染者自身がCOCOAに入力しなければなりません。そんな煩わしさに加え、度重なる不具合で個人情報保護に対する不安も大きくなってしまった。それが、無用の長物と言われることになった由縁です」(ITジャーナリスト)

 そんなこともあり、今回の厚労省の「高齢者・障がい者にも使いやすく」という発表に、SNS上では《えっ、まだ作ってたんだ?もう誰も使わないでしょ》《ワクチン打ったし、とりあえずバッテリー勿体無いので消したわ》《高齢者や障がい者にわかりやすく?しかも来年3月って、おいおい、誰も止める奴がいないのか》《とっくにアンインストール済み。ていうか、むしろインストールしてた奴いたことにビックリ!》と、散々なコメントが噴出。

「COCOAは昨年、厚生労働省が約3億9000万円の随意契約でIT企業に委託し開発されたものですが、同社は契約金額の94%で3社に再委託、されにそれが別の2社にも再々委託されるなど、業務委託が繰り返されて責任の所在が曖昧ななかで、不具合が頻発しました。修正が遅れたことも不人気の要因ですが、最大の問題は陽性者自らが、その事実を自発的に入力する必要があるという点です。匿名性が確保されているとはいえ、何らかの理由で自分が陽性であることが知られてしまう可能性はゼロではない。なので、いくらビジュアルを変えたとしても、使用法自体が変わらない限り、ニーズ拡大は望めない気がしますね」(同ジャーナリスト)

 COCOAに限らず、接触確認アプリがうまく機能するためには、多くの人が使うことが必要で、少なくとも全人口の6割の人がダウンロードしなければ、機能しないと言われている。しかし、現時点でのダウンロード数の全国民数に対する比率は1割強で、目標とされる6割には遠く及ばないのが現状だ。

「つまり、残念ながら現時点ではCOCOAはほぼ機能していない状態ということ。ただ、画期的に性能をアップさせ、使い勝手を良くすれば利用者数が伸びる可能性もある。厚労省には知恵を絞ってもらいたいですね」(前出のジャーナリスト)

 厚労省には税金の無駄遣いと言われないよう、頑張っていただきたい。

(灯倫太郎)

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