このほど岸田首相が議長を務める「経済財政諮問会議」で、経団連の十倉雅和会長などから「現在65歳以上という高齢者の定義を70歳にすべきでは」という提言があった。背後で何が動いているのか。
ファイナンシャルプランナーが解説する。
「財政諮問会議で民間議員からこうした提言があるのは、背後で官邸周辺から事前に中身を伝え、会議で民間議員に議論させたうえで最終的にレールが敷かれるというのがお決まりの筋書き。そのため今回も高齢者の定義は70歳からということになっていく可能性が極めて高いのです」
そして、その背景をこう明かす。
「厳しい年金財源を理由に、国民年金の保険料納付期間を現行の60歳から65歳まで延長する案が政府内で検討されていて、ほぼ決まりだ。その上で、今回の高齢者の定義を70歳にする提言を受け、今度は年金支給開始年齢原則の65歳を遅らせて、70歳にする肚ではと囁かれているのです。つまり社会保障費をいかにカットするかが狙いでしょう」(同)
だが、そうしたズルい魂胆は庶民からとうに見抜かれ、SNSなどでは批判が殺到している。例えば《年金支給開始を70歳からする準備》《70歳から年金とするなら60歳からの嘱託もストップし70歳までは同一賃金にすべき》《死ぬまで働けか》などなどだ。
医療関係者が言う。
「60歳すぎると健康でバリバリ働ける人もいる一方で何割かはどこかに病気や不調を訴える人も増え長時間働けない人も出てくる。当然、若い時のように月に何十万も稼げないし医療費もかさむ。そんな状況で命綱の年金支給が70歳と延びれば生活できない高齢者が急増するのは間違いない。政府はそうした弱者対策をきちんとするのが先決です」
岸田首相は現在、6月から所得税1人あたり年間3万円、住民税と合わせて4万円を定額減税すると大キャンペーンを張り、「増税メガネ」の汚名払拭に躍起だ。そのためSNSでは「これじゃ恩着せメガネ」とも揶揄される始末。しかしその裏では社会保障費と名を変えて支給を遅らせたり取るところではしっかりとる。これでは「ズルメガネ」の異名もつきかねない。
(田村建光)