トランプ米大統領が「日本との交渉を打ち切り、関税を35%に引き上げることもあり得る」と発言したことで、日米関税交渉が重大局面を迎えている。この強硬発言は、東京株式市場に衝撃を与え、相場は一時的に急落した。霞が関の官僚たちは「これは明らかに、日本の参議院選挙初日を狙った“石破潰し”だ」と息を呑む。
日本はこれまで、自動車への追加関税の撤廃を最優先課題としてきた。見返りとして、米国産液化天然ガス(LNG)の輸入拡大や、米国製自動車の購入促進を提案してきたが、トランプ氏には「どれも小粒で米国にメリットが乏しい」と映っていた。
金融系シンクタンク関係者は、トランプ氏の不満の背景をこう分析する。
「トランプ氏からすれば、日本は自国の利益ばかりを主張し、米国が求める農産物市場の開放には応じない。“自動車関税だけ下げてくれ”というのは虫が良すぎるという判断だ。特に、米国産米の日本輸入案を石破政権が封印したことで、トランプ氏の怒りが爆発した」
交渉の矢面に立つ赤沢亮正経済再生担当相は、就任以来7回も訪米しているが、成果は乏しい。霞が関関係者によれば「ベッセント財務長官との面会にも至らず、押しかけ訪問しても門前払いが続いている」とのことだ。
「安倍政権時代、茂木敏充元経済再生担当相は“タフ・ネゴシエーター”としてトランプ氏の信頼を得た。相手の立場や要求を徹底分析し、粘り強く交渉した結果、日本に有利な取引を実現した。だが、赤沢氏はその域に遠く及ばず、米側から“小物”扱いされているのが現実。トランプ氏との初面会で『MAGA』帽をかぶってツーショットを撮影したものの、今では“伝書鳩”のような存在になってしまった」(同)
トランプ政権の苛立ちは、行動にも表れている。アジア初の関税合意国に、日本ではなくベトナムを選んだのだ。背景には、トランプ関連企業のベトナム進出があるとも言われるが、日本外しは明確なメッセージである。
ただし、アメリカの経済ジャーナリストは次のような見方も示す。
「フォルケンダー米財務副長官は、7月2日の米CNBCテレビで『日本との交渉は進展しており、近く状況を発表できる』と語っている。つまり、今回のトランプ氏の発言は、最終局面でさらなる譲歩を引き出すための“詰めの一手”とも解釈できる」
米国の圧力が本気なのか交渉術なのか、その見極めが極めて重要である。もし判断を誤れば、石破政権は崩壊の危機に直面しかねない。日米関税交渉の行方は、経済問題を超えて政治の命運を左右する重大テーマとなった。
(文:田村建光)